死刑事件(いわゆる永山事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。
問題の所在(論点)
死刑の科刑が許されるための判断基準(いわゆる永山基準)と、本件における死刑選択の妥当性。
規範
死刑の適用は、刑法36条等の趣旨に照らし、慎重に行われなければならない。具体的には、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害手段の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧生育歴、⑨前科、⑩犯行後の情状の諸点を総合的に考慮し、被告人の罪責が誠に重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に、許容される。
重要事実
被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京都、函館、名古屋の各地で警備員2名及びタクシー運転手2名の計4名を射殺した。さらに、タクシー運転手から売上金を強取し、その約5か月後には都内で強盗殺人未遂事件を起こした。被告人の生育歴や犯行時の年齢(少年であったこと)等の情状があったが、第一審および控訴審は死刑を選択した。
あてはめ
被告人は、わずか1か月の間に4名もの尊い命を奪っており、結果は極めて重大である(④)。犯行は拳銃を用いた射殺であり、その手段・方法は執拗かつ残虐といえる(③)。また、何ら落ち度のない市民を対象とした連続的な犯行であり、社会的影響や遺族の被害感情も甚大である(⑤⑥)。被告人の生育歴や犯行時の年齢等の有利な事情を十分に考慮しても(⑦⑧)、犯行の罪質や結果の重大性に照らせば、その罪責は誠に重大である。したがって、死刑の科刑を維持した原判決は正当である。
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…
結論
死刑の選択を認めた原判決を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の可否が争点となる事案において、考慮すべき9つの要素(永山基準)を提示したリーディングケースである。答案上は、まず被害者数や態様の悪質性を重視しつつ、犯人の年齢等の主観的・個人的事情を「死刑を回避すべき決定的な事情」となり得るかという文脈で対比させて論じる際に用いる。
事件番号: 昭和56(あ)1505 / 裁判年月日: 昭和58年7月8日 / 結論: 破棄差戻
一 死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと…
事件番号: 昭和62(あ)1062 / 裁判年月日: 平成5年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響、遺族の被害感情、被告人の前科、犯行後の情状等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、債務の支払猶予を請うた際、債権者Aから脅迫的言動を受け、持参したライフル銃を突きつけられたことに…
事件番号: 昭和57(あ)932 / 裁判年月日: 昭和59年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。 第1 事案の概要:被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あ…
事件番号: 平成5(あ)570 / 裁判年月日: 平成9年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、極めて悪質な罪質や残虐な犯行態様、重大な結果等の諸事情に照らし、死刑の科刑を是認した原判決は正当である。 第1 事案の概要:元警察官の被告人が、在職中の拳銃窃盗・強盗致傷事件等による服役を終え、仮出獄からわずか5日後に本件に及んだ。被告人は派出所の警察官を包丁で多数…