死刑事件(北海道平取町一家4人射殺事件)
判旨
死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響、遺族の被害感情、被告人の前科、犯行後の情状等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に許される。
問題の所在(論点)
刑法199条(殺人罪)における量刑上の死刑選択の許容性と、その際の判断基準(特に被害者の数、動機の酌量余地、計画性の有無等の考慮の在り方)。
規範
死刑の科刑が許容されるか否かの判断においては、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害方法の執拗性・残虐性等)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢、前科、⑧犯行後の情状、その他一切の事情を総合的に考慮しなければならない。これらの事情を照らし合わせた結果、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも、また一般予防の観点からも、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択が許される(いわゆる永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、債務の支払猶予を請うた際、債権者Aから脅迫的言動を受け、持参したライフル銃を突きつけられたことに恐怖し、とっさにAを射殺した。さらに、犯行の発覚を恐れて、その場にいたAの妻と2歳の次男を射殺し、さらに逃げようとした長女をも射殺した。計4名を殺害する際、至近距離から頭部を狙い、倒れた後もとどめを刺すなどした。被告人には前科がなく、反省の態度を示しており、Aの言動が犯行の端緒となった側面があった。
あてはめ
まず、動機についてはAの言動に触発された面はあるが、何ら落ち度のない妻子3名を隠ぺい目的で殺害した点は、動機に酌量の余地がない。態様についても、至近距離からライフルで頭部を狙い、とどめまで刺す行為は冷酷かつ凶悪である。結果として一家4名の生命を奪った事態は極めて重大であり、遺族の強烈な被害感情や社会的影響も無視できない。計画的犯行ではないことや前科がないこと、反省の情等の被告人に有利な事情を最大限考慮しても、4名殺害という結果の重さと犯行の冷酷さに照らせば、その罪責は誠に重大である。
事件番号: 昭和62(あ)498 / 裁判年月日: 平成2年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京…
結論
本件犯行の罪責は極めて重大であり、死刑を選択した第一審判決を維持した原判決の判断は、やむを得ないものとして是認できる。上告棄却。
実務上の射程
死刑選択の基準を示した昭和58年永山判決の枠組みを再確認し、実務上適用した事例である。特に、犯行の端緒に被害者側の落ち度がある場合や、計画性がない場合、前科がない場合であっても、殺害された人数が4名に達し、犯行態様が冷酷である場合には、死刑の選択が正当化されることを示しており、量刑論の検討において重要な指標となる。
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…
事件番号: 平成17(あ)1101 / 裁判年月日: 平成19年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、永山基準(最高裁昭和58年判決)に基づき、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。暴力団組織を利用した計画的・組織的な殺害行為であり、被告人が主導的な立場で冷酷かつ非情に実行を命じた本件にお…
事件番号: 平成5(あ)570 / 裁判年月日: 平成9年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、極めて悪質な罪質や残虐な犯行態様、重大な結果等の諸事情に照らし、死刑の科刑を是認した原判決は正当である。 第1 事案の概要:元警察官の被告人が、在職中の拳銃窃盗・強盗致傷事件等による服役を終え、仮出獄からわずか5日後に本件に及んだ。被告人は派出所の警察官を包丁で多数…
事件番号: 昭和56(あ)1505 / 裁判年月日: 昭和58年7月8日 / 結論: 破棄差戻
一 死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと…