死刑の量刑が維持された事例(福岡の暴力団組長による対立暴力団元組長射殺等事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、永山基準(最高裁昭和58年判決)に基づき、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。暴力団組織を利用した計画的・組織的な殺害行為であり、被告人が主導的な立場で冷酷かつ非情に実行を命じた本件においては、死刑の科刑はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑選択の基準(永山基準)に照らし、暴力団組織の論理に基づく2名の殺害を含む本件各犯行において、死刑を適用することが刑罰の均衡および一般予防の観点から許容されるか。
規範
死刑選択の可否については、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の方法の執拗性・残虐性、結果の重大性(殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に、死刑が選択されるべきである。
重要事実
暴力団組長である被告人は、組織内での功績を狙い、組員4名と共謀して他団体の元組長を路上で射殺した(犯行1)。さらに、犯行1の関与発覚を恐れ、口封じのため共犯者の1人を絞殺し死体を遺棄した(犯行2)。その他、被告人は単独での殺人未遂、傷害、覚せい剤使用等にも及んでいた。被告人は、実行役に対し繰り返し叱責して早期実行を迫り、具体的な殺害方法を指示するなど、犯行を主導した。被告人には銃器を使用した殺人未遂の前科も存在していた。
あてはめ
第1に、犯行1は組織内の地位向上のため、犯行2は口封じのためという自己本位かつ反社会的な動機に基づく。第2に、銃弾8発を命中させる、あるいは針金で絞殺するという殺害態様は極めて冷酷非情で残虐である。第3に、被告人は主犯として配下の組員に強引に実行を承諾させるなど、犯行を専ら発案・指示しており、責任は極めて重い。第4に、2名の命を奪った結果は重大であり、平穏な住宅街での犯行という社会的影響も大きい。第5に、不合理な弁解により反省の情が見られず、銃器を使用した重い前科がある点から、生命軽視の傾向が顕著である。
事件番号: 平成21(あ)68 / 裁判年月日: 平成24年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団組長による3件の殺人等につき、組織的な犯行であること、3名の生命を奪った結果の重大性、首謀者としての責任の重さを重視し、被害者遺族への被害弁済等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、配下組員と共謀し、(1)保険金詐欺の口封じ、…
結論
示談の成立等の情状を考慮しても、被告人の罪責は誠に重く、原判決が維持した第一審の死刑判決は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
暴力団の組織的犯罪における首謀者の責任を重く評価する実務の傾向を示す。特に、実行行為に直接関与せずとも、執拗な指示や高圧的な命令を通じて犯行を支配した場合には、永山基準の各要素において加重的に評価される。答案上は、殺害人数が2名であっても、動機の卑劣性や犯行態様の残虐性が顕著な場合には死刑が是認される具体例として活用できる。
事件番号: 平成18(あ)2339 / 裁判年月日: 平成20年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団幹部5名を射殺した事案において、死刑の適用が妥当であると判断された事例(いわゆる永山基準の枠組みを踏襲)。 第1 事案の概要:暴力団幹部である被告人は、住宅街にある事務所において、所持していた拳銃で同組織の幹部5名を次々と射殺した。動機について被告人は、被害者らによる自らの殺害計画が…
事件番号: 平成21(あ)1640 / 裁判年月日: 平成25年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が検討される事案において、組織的背景に基づく犯行の性質、殺意の強固さ、結果の重大性、地域社会への影響、及び被告人の役割を総合的に考慮すれば、たとえ遺族の一部に宥恕の意思があり、被告人が暴力団を脱退したなどの情状を考慮しても、死刑に処した判断は是認される。 第1 事案の概要:暴力団員である…
事件番号: 平成18(あ)417 / 裁判年月日: 平成20年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用は、事案の性質、犯行の態様・結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限って許される。 第1 事案の概要:被告人は、暴力団…
事件番号: 昭和62(あ)1062 / 裁判年月日: 平成5年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響、遺族の被害感情、被告人の前科、犯行後の情状等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、債務の支払猶予を請うた際、債権者Aから脅迫的言動を受け、持参したライフル銃を突きつけられたことに…