一 死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される。 二 先の犯行の発覚をおそれ、あるいは金品の強取するため、残虐、執拗あるいは冷酷な方法で、次々に四人を射殺し、遺族の被害感情も深刻である等の不利な情状(判文参照)のある本件においては、犯行時の年齢(一九歳余)、不遇な生育歴、犯行後の獄中結婚、被害の一部弁償等の有利な情状を考慮しても、第一審の死刑判決を破棄して被告人を無期懲役に処した原判決は、甚だしく刑の量定を誤つたものとして破棄を免れない。
一 死刑選択の許される基準 二 無期懲役を言い渡した控訴審判決が検察官の上告により量刑不当として破棄された事例
刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
判旨
死刑制度は合憲であり、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮し、罪刑の均衡や一般予防の見地から極刑がやむを得ないと認められる場合には死刑の選択が許される。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許されるための判断枠組み、および少年法51条の精神を及ぼすべき精神的未熟さ等の有利な情状をいかに評価すべきか。
規範
死刑の選択に際しては、以下の9つの要素(いわゆる永山基準)を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。1.犯行の罪質、2.動機、3.態様(殺害方法の執拗性・残虐性)、4.結果の重大性(特に殺害された被害者数)、5.遺族の被害感情、6.社会的影響、7.犯人の年齢、8.前科、9.犯行後の情状。
事件番号: 昭和62(あ)498 / 裁判年月日: 平成2年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京…
重要事実
被告人(犯行時19歳)は、米軍基地から窃取した拳銃を用い、約1か月間に東京、京都、函館、名古屋で計4名の無辜の市民を至近距離から狙撃して殺害した。その後も警備員を狙撃して殺害未遂に及んだ。第一審は死刑としたが、原審は、被告人の不遇な生育環境や精神的未熟さ、結婚による心境の変化、印税による一部遺族への被害弁償等を重視し、無期懲役に減軽したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件は4名もの生命を奪った結果が極めて重大であり、命乞いを無視した射殺など態様も残虐である。動機に同情の余地はなく、社会的影響も甚大である。被告人に有利な情状として挙げられた「生育環境」は、他の兄弟が健全に成長している点に照らせば絶対的要因とは言えず、19歳という年齢からも18歳未満と同視すべき特段の事情はない。一部被害弁償や結婚も、罪責の重大性に照らせば過大評価すべきではなく、原審の評価は総合的な刑の量定を誤ったものである。
結論
原判決には量刑の前提となる事実の認定・評価に誤りがあり、死刑を回避して無期懲役とした判断は甚だしく刑の量定を誤ったもので、著しく正義に反する。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
死刑選択の可否が問題となる事案におけるリーディングケースである。答案では、9つの要素を問題文の事実に即して具体的に検討し、特に「被害者数」や「態様の残虐性」を重視して罪刑均衡の観点から論じる。少年事件であっても、18歳以上であれば本基準が適用され、特段の事情がない限り死刑回避の決定的理由にはならないことを示す際に用いる。
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…
事件番号: 昭和62(あ)1062 / 裁判年月日: 平成5年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響、遺族の被害感情、被告人の前科、犯行後の情状等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、債務の支払猶予を請うた際、債権者Aから脅迫的言動を受け、持参したライフル銃を突きつけられたことに…
事件番号: 平成15(あ)894 / 裁判年月日: 平成18年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用が許容される基準(いわゆる永山基準)の提示 第1 事案の概要:被告人は、拳銃を窃取して所持し、約1ヶ月の間に4名を射殺した。犯行は計画的かつ執拗であり、被害者らに落ち度はない。遺族の被害感情は峻烈であり、社会に与えた恐怖も甚大である。一方で、犯行当時、被告人は19歳の未成年であり、家庭環…