死刑の量刑が維持された事例(四日市の古美術商強盗殺人等事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条、98条2項に違反せず、殺害の態様が冷酷かつ残忍で結果が重大な強盗殺人等の事案においては、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および一審の無期懲役判決を破棄して死刑に処した原判決の量刑が、被告人の前科の欠如や反省等の情状を考慮してもなお妥当(刑訴法411条を適用すべきでない)といえるか。
規範
死刑の選択が許されるか否かは、いわゆる永山基準(最高裁昭和58年7月8日判決)を踏まえ、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の冷酷性・残忍性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に判断される。
重要事実
被告人は、共犯者らと共に、(1)会社事務所からの金庫窃盗および古美術店経営者宅での強盗を行い、(2)その数日後、主導的立場にあった共犯者に反感を抱き、睡眠導入剤で眠らせた上でアイスピックで突き刺し、紐で絞殺して死体をダムに遺棄した(殺人・死体遺棄)。さらに(3)約1年後、金員強取目的で別の古美術商を架空の取引話で誘い出し、同様の手口で殺害して現金約430万円を強取し、死体を遺棄した(強盗殺人・死体遺棄)。被告人には前科がなく、反省と謝罪の意思を示していた。
あてはめ
本件各犯行は金銭欲や私憤に基づくもので動機に酌量の余地がなく、周到な準備に基づく計画的犯行である。殺害態様もアイスピックやスパナを用い、さらに絞殺するという冷酷、非情かつ残忍なものであり、2名の生命を奪った結果は甚だ重大である。被告人は実行行為に積極的に関与しており、遺族の処罰感情も峻烈である。これらの悪質性は、前科がないことや反省の情といった被告人側の事情を十分に考慮しても、なお無期懲役を維持し難いほどに重大であると評価される。
結論
本件各犯行の罪責は誠に重大であり、死刑を選択した原判断は、やむを得ないものとして是認できる。上告棄却。
実務上の射程
死刑の合憲性を前提としつつ、特に「殺害態様の残忍性」と「強盗殺人・殺人の併合罪」という結果の重さを重視し、前科のない被告人に対しても死刑を選択した事例。答案上は、永山基準の各要素(態様、結果、動機等)に事実を具体的にあてはめる際の参照例として有用である。
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成8(あ)482 / 裁判年月日: 平成12年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて悪質かつ重大な結果を招いた強盗殺人等の事案において死刑を科すことは、諸般の事情を考慮しても是認される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀の上、一人暮らしの従弟(36歳)をビニールひもで緊縛・絞殺して権利証等を強取し、死体を海浜に遺棄した(…