死刑の量刑が維持された事例(首都圏連続不審死事件)
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
判旨
被告人が犯人であることの証明が間接事実のみによる場合であっても、(1)被害者との近接した接触、(2)犯行道具の事前入手、(3)自殺・事故死の可能性の排除、(4)殺害の動機等の各間接事実を総合考慮し、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断される場合には、有罪判決を維持することは正当である。
問題の所在(論点)
直接証拠がない状況において、間接事実の積み重ねにより、殺人罪(刑法199条)の犯人性が「合理的な疑いを超えた証明」に至っているといえるか。また、3名の殺害等の事案において死刑を選択することが社会通念上相当か。
規範
刑事訴訟法318条に基づく事実認定において、直接証拠がない場合であっても、複数の間接事実を総合的に評価し、それらによって構成される事実関係が、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明力を有するか否かを検討すべきである。また、死刑の適用については、殺害態様の計画性・悪質性、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、及び被告人の態度を総合し、その刑事責任が極めて重大な場合には、死刑の選択も許容される。
重要事実
被告人は結婚詐欺等を繰り返していたところ、半年余りの間に3名の男性を殺害した。被告人は、(1)各被害者の死亡時に近接して死亡場所で二人きりで行動しており、(2)犯行現場の練炭コンロ等と特徴が一致する物品を事前に入手していた。また、(3)被害者らに自殺や事故の事情はなく、(4)金銭的利得を得る一方で嘘が発覚しつつあるという殺害の動機も認められた。殺害方法は睡眠状態に陥らせた上での練炭燃焼による一酸化炭素中毒等であった。被告人は不合理な弁解を続け、反省の態度を示していない。
事件番号: 平成26(あ)589 / 裁判年月日: 平成29年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】間接事実を総合することにより、犯人が被告人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断し、強盗殺人罪の成立を肯定した。 第1 事案の概要:被告人が2名の被害者から債務の弁済を請求されていた際、両名を殺害して免れようと考え、睡眠薬等で意識もうろう状態に陥らせた上で…
あてはめ
まず犯人性について、被告人が被害者と最後に接触した事実、凶器(練炭等)の準備状況、自殺・事故の否定、及び金銭トラブルに端を発する動機を総合すれば、被告人が犯人であることは「合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に証明」されている(刑訴法318条)。次に量刑について、あらかじめ練炭を準備し、自殺に見せかけて3名を殺害した態様は「周到かつ計画的」で極めて悪質である。3名もの生命を奪った「結果は重大」であり、遺族の処罰感情も峻烈である。反省のなさを考慮すれば、被告人の刑事責任は極めて重大といえる。
結論
被告人を犯人と認定し死刑を維持した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
間接事実による犯人性立証の枠組み、および複数の殺人事件(永山基準を踏まえた判断)における死刑適用の正当性を示す指針となる。
事件番号: 令和2(あ)124 / 裁判年月日: 令和5年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および刑法199条に死刑を定めたことは憲法9条、13条、31条、36条、98条2項に違反しない。保険金目的の計画的な殺人事件において、首謀者として主導的役割を果たし、2名の生命を奪った結果が重大である場合、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、知人らと共謀し、保険金を得る…
事件番号: 平成15(あ)1624 / 裁判年月日: 平成19年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、保険金目的の計画的かつ冷酷な殺人および強盗殺人について、各被告人の役割や犯情を総合考慮し、死刑の適用が是認された。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは共謀し、(1)保険金目的でフィリピンにて1名を窒息死させ、(2)同様に別の1名を窒息死させて保険…
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…
事件番号: 平成19(あ)2275 / 裁判年月日: 平成23年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を含む複数の重大な犯罪について、遺族である実子が死刑回避を強く望むという重い情状がある場合でも、犯行の動機、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。被告人の刑事責任の極めて重大な事案では、家族の助命嘆願があっても死刑判決を維持することが正当化される。 第1 事案…