死刑の量刑が維持された事例(鳥取連続不審死事件)
刑法11条,刑法240条,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
判旨
間接事実を総合することにより、犯人が被告人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断し、強盗殺人罪の成立を肯定した。
問題の所在(論点)
直接証拠を欠く事案において、犯人性に関する複数の間接事実の総合評価により、刑事裁判における証明の程度(合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明)を満たすか否か。
規範
被告人が犯人であることの立証について、直接証拠がない場合であっても、複数の間接事実を総合することによって、統計的・経験則的な観点から被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされれば、有罪判決を導くことができる。
重要事実
被告人が2名の被害者から債務の弁済を請求されていた際、両名を殺害して免れようと考え、睡眠薬等で意識もうろう状態に陥らせた上で水中に誘導し溺死させた強盗殺人の事案。直接証拠はないが、①被告人が各被害者の行方不明直前に最後に接触し、直後に体が濡れた状態で目撃されていること、②遺体から検出された睡眠薬等を被告人が入手可能であったこと、③被告人に殺害の動機が認められること等の間接事実が存在した。
あてはめ
まず、目撃証言等の客観的事実との整合性から、被告人が犯行直後に濡れた状態で目撃された事実等の信用性を肯定した。その上で、被告人と被害者の最終接触事実、凶器(睡眠薬)の入手可能性、および強固な殺害動機という個別の間接事実を総合した。これらにより、被告人以外の者が犯人であるとする合理的な可能性を排除し、被告人が犯人であることは合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に証明されていると判断した。
事件番号: 平成26(あ)639 / 裁判年月日: 平成29年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が犯人であることの証明が間接事実のみによる場合であっても、(1)被害者との近接した接触、(2)犯行道具の事前入手、(3)自殺・事故死の可能性の排除、(4)殺害の動機等の各間接事実を総合考慮し、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断される場…
結論
被告人を各事実の犯人と認めた一審・二審の有罪認定は正当であり、死刑の科刑もやむを得ないとして上告を棄却した。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「新日鉄広畑事件」等の流れを汲む、間接事実による犯人性立証の具体例を示すものである。答案上は、複数の間接事実を提示した上で、それらが単に併存しているだけでなく、それらを総合することで「被告人が犯人でなければ説明がつかない」という排他的推論を行う際の思考プロセスとして活用できる。
事件番号: 昭和53(あ)787 / 裁判年月日: 昭和55年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人罪における死刑等の量刑判断において、犯行の動機、計画性、殺害手段の残虐性、結果の重大性を重視し、被告人の不遇な生い立ち等の有利な事情を考慮してもなお重刑がやむを得ないと判断される場合には、その科刑は正当である。 第1 事案の概要:被告人は、殺意を持って強盗殺人の犯行に及び、鼻背部割創に基づ…
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…