死刑の量刑が維持された事例(マニラ保険金殺人事件)
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
判旨
死刑制度および刑法199条に死刑を定めたことは憲法9条、13条、31条、36条、98条2項に違反しない。保険金目的の計画的な殺人事件において、首謀者として主導的役割を果たし、2名の生命を奪った結果が重大である場合、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑制度および刑法199条の死刑規定の合憲性。および、2名の殺害を含む本件一連の犯行について、死刑を適用することが量刑上不当(刑訴法411条適用対象)か否か。
規範
死刑制度の合憲性については、憲法13条、31条、36条等に照らし、過去の当裁判所大法廷判決の趣旨に照らして合憲であることは明らかである。量刑判断にあたっては、永山基準を踏まえ、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって罪刑の均衡および一般予防の観点からやむを得ない場合に死刑が許容される。
重要事実
被告人は、知人らと共謀し、保険金を得る目的で2名の知人を海外へ誘い出し、現地の実行役を雇って銃殺させた(2件の殺人)。また、これに関連して詐欺、詐欺未遂、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、有印私文書偽造・同行使の各罪を犯した。被告人は犯行を発案し終始主導的に関与した首謀者であり、公判では不合理な弁解に終始し反省の情が見られない一方、被告人には前科がなかった。
あてはめ
各殺人は、死亡保険金を目的として現地の実行役を雇い銃殺したものであり、計画的かつ利欲性が高く人命軽視の態度が甚だしい。態様も冷酷である。被告人は首謀者として主導的役割を果たしており、2名の生命を奪った結果は極めて重大である。遺族の処罰感情も厳しく、被告人に反省の情も認められない。前科がない等の事情を考慮しても、その刑事責任は極めて重大である。
事件番号: 昭和62(あ)710 / 裁判年月日: 平成2年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が殺人、有印私文書偽造、同行使、詐欺の犯人であるとした原判決の認定は、記録を調査しても事実誤認があるとは認められず、上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、殺人、有印私文書偽造、同行使、詐欺の罪に問われた。第一審判決は被告人をこれらの犯人と認定し、原判決(控訴審)もこれを是認した…
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、第一審の死刑判決を維持した原判決は、やむを得ないものとして是認できる。上告棄却。
実務上の射程
死刑制度の合憲性については既存の判例踏襲であることを確認するにとどめる。答案上は、保険金目的の計画的な複数人殺害において、首謀者であり反省がない場合には、前科がなくとも死刑の選択が正当化され得るという判断枠組み(永山基準のあてはめ例)として参照すべきである。
事件番号: 平成26(あ)639 / 裁判年月日: 平成29年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が犯人であることの証明が間接事実のみによる場合であっても、(1)被害者との近接した接触、(2)犯行道具の事前入手、(3)自殺・事故死の可能性の排除、(4)殺害の動機等の各間接事実を総合考慮し、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断される場…
事件番号: 平成19(あ)352 / 裁判年月日: 平成23年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を含む一連の犯行について、動機に酌量の余地がなく殺害態様も冷酷非道である場合、被告人の病状や一定の反省等の事情を考慮しても、死刑を選択した一審判決の維持は相当である。 第1 事案の概要:被告人は、保険金詐欺の発覚を恐れ、加害者役のAに睡眠導入剤を飲ませて抵抗力を奪い、頸部圧迫により窒息死…
事件番号: 平成13(あ)1237 / 裁判年月日: 平成17年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず合憲である。また、利欲目的の計画的な2名殺害等の事案において、犯行の態様、動機、結果の重大性、被告人の態度等を総合考慮し、死刑の選択がやむを得ないと判断された。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、一人暮らしの高齢女性(82歳)の土地を無断売却し…
事件番号: 平成15(あ)1624 / 裁判年月日: 平成19年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、保険金目的の計画的かつ冷酷な殺人および強盗殺人について、各被告人の役割や犯情を総合考慮し、死刑の適用が是認された。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは共謀し、(1)保険金目的でフィリピンにて1名を窒息死させ、(2)同様に別の1名を窒息死させて保険…