死刑の量刑が維持された事例(A事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず合憲である。また、利欲目的の計画的な2名殺害等の事案において、犯行の態様、動機、結果の重大性、被告人の態度等を総合考慮し、死刑の選択がやむを得ないと判断された。
問題の所在(論点)
死刑制度の憲法適合性、および本件における量刑(死刑選択)の妥当性(刑法11条、刑訴法411条)。
規範
死刑の選択が許容されるか否かの判断(永山基準)にあたっては、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害方法の執拗さ・残虐性等)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の観点からもやむを得ない場合に限られる。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、一人暮らしの高齢女性(82歳)の土地を無断売却して約2億円を詐取した。その後、詐欺の発覚を防ぐため女性を絞殺し、さらに全責任を共犯者の一人に転嫁して自己の刑責を免れるため、当該共犯者を山中に連れ出し至近距離から拳銃で射殺した。被告人は利得の大部分を手中に収め、公判では不自然な弁解に終始し、逃亡中には覚せい剤使用等の余罪も犯した。一方で、被害者1名の遺族に対し500万円の弁償金を支払っている。
あてはめ
本件は金銭的利欲目的の計画的な犯行であり、動機に酌量の余地はない(②)。殺害態様も首を絞める、至近距離から射殺するなど冷酷かつ非情である(③)。2名の生命を奪った結果は極めて重大であり(④)、遺族の被害感情も厳しい(⑤)。被告人は公判で不自然な弁解をして自責の念に欠け(⑨)、逃亡中に拳銃加重所持等の犯行を重ねている。一部の被害弁償という有利な事情を考慮しても、これら悪質な犯行事情に照らせば、罪責は極めて重大といえる。
事件番号: 平成13(あ)1667 / 裁判年月日: 平成17年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を決定するに際しては、犯行の罪質、動機、計画性、殺害方法の残虐性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。本件のように、2名の命を奪い、主導的立場で計画的かつ極めて残虐な犯行に及んだ場合には、反省や遺族への金銭支払等の事情があっ…
結論
本件各犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性等に照らせば、被告人を死刑に処した原判断は、やむを得ないものとして是認できる。
実務上の射程
2名の殺害事案において、利欲目的や隠蔽目的といった動機の悪質さ、計画性、不合理な弁解による反省の欠如が認められる場合、死刑判決が維持されやすいことを示す具体例。死刑制度自体の合憲性については既確立の判例を引用する形で処理される。
事件番号: 平成11(あ)591 / 裁判年月日: 平成16年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の選択にあたっては、罪質、動機、犯行態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であると認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人両名は共犯者…
事件番号: 令和2(あ)124 / 裁判年月日: 令和5年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および刑法199条に死刑を定めたことは憲法9条、13条、31条、36条、98条2項に違反しない。保険金目的の計画的な殺人事件において、首謀者として主導的役割を果たし、2名の生命を奪った結果が重大である場合、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、知人らと共謀し、保険金を得る…
事件番号: 平成25(あ)1126 / 裁判年月日: 平成27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利欲的かつ身勝手な動機に基づき、従属的な関係にある共犯者を利用して二人の生命を奪った事案において、被告人が犯行を発案・計画・指示し、利得の大部分を得ているなどの諸事情を考慮すれば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、いとこで年下の共犯者との従属的な関係を利用し、二件の殺人等を主…
事件番号: 平成16(あ)1687 / 裁判年月日: 平成19年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。また、複数の被害者を殺傷した強盗致死等の事案において、殺意の有無、動機、犯行態様の残虐性、結果の重大性を総合考慮し、死刑の選択を是認した。 第1 事案の概要:暴力団関係の紛議等を契機として、被告人は共犯者と共謀し、(1)男性1名を河川に投げ込んで溺…