死刑の量刑が維持された事例(風俗店経営者,店長強盗殺人等事件)
判旨
死刑の量刑を決定するに際しては、犯行の罪質、動機、計画性、殺害方法の残虐性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。本件のように、2名の命を奪い、主導的立場で計画的かつ極めて残虐な犯行に及んだ場合には、反省や遺族への金銭支払等の事情があっても死刑はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑選択の要件(刑法9条、66条、刑事訴訟法411条2号等に関連する量刑の適正性)。特に、殺害された被害者が2名である事案において、犯行後の反省や被害回復の試みがある場合に、なお死刑を選択することが許容されるか。
規範
死刑の科刑が許容されるか否かの判断においては、いわゆる永山基準に基づき、①罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からやむを得ない場合に限り、死刑を選択することができる。
重要事実
風俗店の従業員であった被告人は、店の乗っ取りを企て、他の従業員と共謀して店長と経営者の2名を殺害し、現金を強取した上、死体をコンクリート詰めで海中に遺棄した。犯行はあらかじめ凶器や遺棄用具を準備した計画的なものであり、殺害方法はハンマーでの殴打やナイフでの多数回刺突、ひもでの絞首を組み合わせた極めて凄惨なものであった。被告人は主犯格として犯行を主導し、死後8か月間にわたり店を経営して巨額の利益を得た。一方で、被告人は事実を認め反省を示し、5000万円超を遺族に支払っている。
あてはめ
まず、2名の尊い生命を奪った結果は誠に重大である。動機は利得目的で悪質極まりなく、準備状況から計画性も高い。殺害態様は複数の凶器を用いて執拗に攻撃を加えており、凄惨かつ残虐である。被告人は主犯として終始主導し、犯行後も平然と店を経営するなど社会的影響も大きい。これら負の要因に照らせば、被告人が反省の情を示し、多額の現金を遺族に支払ったという有利な情状を十分に考慮したとしても、その罪責は極めて重い。したがって、罪罰の均衡の観点から死刑を選択することはやむを得ないといえる。
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…
結論
被告人の罪責は誠に重く、死刑を維持した第1審及び控訴審の判断は正当として是認される。
実務上の射程
被害者が2名以上の殺人・強盗殺人事件において、死刑選択の可否を検討する際の標準的な判断枠組みを示す。特に、金銭的賠償や反省といった「犯行後の情状」が、犯行自体の「罪質・態様」の悪質さを覆すに足りない場合の論理構成として活用できる。
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…
事件番号: 平成13(あ)1286 / 裁判年月日: 平成17年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等を総合的に考慮し、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。本件のような主導的立場で敢行された3名の強盗殺人事犯等において、刑事責任は極めて重く、死刑の維持は妥当である。 第…
事件番号: 平成13(あ)1401 / 裁判年月日: 平成17年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の極めて重大な罪を犯した被告人に対し、犯行の態様が冷酷かつ残忍で結果が甚大であり、前科関係や動機にも酌むべき点がない場合、不遇な成育歴等の事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、約半月の間にスナック等の女性経営者計4名を窒息死または失血死させて現金を強奪する…
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…