死刑の量刑が維持された事例(大阪の相場師強盗殺人事件)
判旨
死刑制度およびその執行方法は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の選択にあたっては、罪質、動機、犯行態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であると認められる場合に許容される。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および複数の被害者を殺害した強盗殺人・死体遺棄事件において、犯行の計画性や残虐性と比較して、被告人の前科がないこと等の好転的な情状をどの程度考慮し、死刑を選択すべきか。
規範
死刑の量刑判断にあたっては、①罪質、②動機、③犯行態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の処罰感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の9項目を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないといえる場合に、死刑が許容される(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人両名は共犯者1名と共に、投資顧問会社社長Cから多額の現金を強取し、証拠隠滅のためCとその従業員Dを殺害することを計画。被告人らはDを拘束してCの居所を吐かせ、Cを拉致して両名を緊縛。現金計1億40万円を強取した。その後、無抵抗の両名に対し、3人がかりで同軸ケーブルを頸部に巻き付け長時間絞め付けて殺害。さらに死体をコンクリート詰めにして土中に埋めて遺棄した。被告人Aは前科なし、Bは罰金前科のみであり、両名とも現在は冥福を祈っている状況にあった。
あてはめ
本件は多額の現金獲得を目的とした計画的犯行(②)であり、動機に酌量の余地はない。犯行態様は、無抵抗な2名を3人がかりで長時間絞殺し、死体をコンクリート詰めにするなど、冷酷・非情かつ残忍である(③)。何ら落ち度のない2名の生命を奪った結果は極めて重大であり(④)、遺族の被害感情も峻烈である(⑤)。被告人両名は犯行に積極的かつ重要な役割を果たしており、前科がないことや反省の態度等の被告人側の事情(⑧⑨)を十分に考慮しても、罪責は誠に重大といえる。したがって、死刑を選択した一審判決を維持した原判断は相当である。
事件番号: 平成12(あ)1160 / 裁判年月日: 平成16年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、強盗殺人事件において主導的な役割を果たし、犯行態様が冷酷かつ結果が重大である場合、共犯者の刑罰との均衡を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人はバカラ賭博の借金返済に窮し、共犯者と共謀して貴金属販売業者の男性と交際相手の女性を殺害して…
結論
被告人両名を死刑に処した一審判決を維持した原審の判断は妥当であり、死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。
実務上の射程
死刑選択の判断枠組みとして「永山基準(最判昭58.7.8)」を再確認した事例。司法試験答案においては、殺害された被害者が2名以上の場合、犯行の計画性や態様の残虐性を強調し、被告人側の有利な事情(初犯、反省等)を上回る「罪責の重大性」を論証する際のモデルとなる。特に「強盗殺人」という利得目的と「証拠隠滅」の意図が組み合わさった場合の悪質性を評価する指標として活用できる。
事件番号: 平成17(あ)1901 / 裁判年月日: 平成21年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度と憲法13条、31条、36条の適合性、及び死刑選択の基準(いわゆる永山基準)。 第1 事案の概要:被告人は当時19歳の少年であったが、計4名を相次いで射殺(連続ピストル射撃事件)。犯行態様は至近距離から確実な殺意をもって行われた冷酷かつ非情なものである。動機に酌むべき点はなく、4名もの尊い…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成7(あ)450 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、保険金目的の殺人や口封じのための連続殺人を主導した被告人に対し、犯行の態様、結果の重大性、主導的立場等の諸般の情状を考慮して死刑を選択した原判決を正当とした。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、配下の組員らと共謀し、保険金目的でA及びBの殺…
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…