死刑の量刑が維持された事例(さいたま保険金殺人等事件)
判旨
利欲的かつ身勝手な動機に基づき、従属的な関係にある共犯者を利用して二人の生命を奪った事案において、被告人が犯行を発案・計画・指示し、利得の大部分を得ているなどの諸事情を考慮すれば、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
数人の殺害等を含む重大な刑事事件において、死刑の選択が許容されるための判断枠組み、および主導的立場にある被告人と実行犯(共犯者)との刑事責任の比較・評価が問題となる。
規範
死刑選択の可否については、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡、一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は、いとこで年下の共犯者との従属的な関係を利用し、二件の殺人等を主導した。第一の事件では、保険金目的で被害者に睡眠薬を飲ませ浴槽に沈めて殺害し、3600万円を詐取。第二の事件では、金銭トラブルを理由に、就寝中の被害者の胸部を柳刃包丁で突き刺して殺害した。被告人は犯行を発案・計画し、共犯者に具体的指示を出して実行させ、詐取金の多くを取得した。被告人は不合理な弁解を続け、反省の情がない。
あてはめ
本件は二人の生命を奪った結果が極めて重大である。犯行態様は、事故死を装うための薬物利用や就寝中を狙った刺殺など、計画的かつ冷酷・非道である。被告人は共犯者を「意のままになる存在」として利用しており、自ら発案・計画・指示を行って利益を独占していることから、実行犯である共犯者よりも責任は相当に重い。不合理な弁解に終始する態度は反省の欠如を示し、罰金前科のみという事情を考慮しても、極刑を回避すべき決定的な事情とはいえない。
事件番号: 平成13(あ)1237 / 裁判年月日: 平成17年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず合憲である。また、利欲目的の計画的な2名殺害等の事案において、犯行の態様、動機、結果の重大性、被告人の態度等を総合考慮し、死刑の選択がやむを得ないと判断された。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、一人暮らしの高齢女性(82歳)の土地を無断売却し…
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、第一審および控訴審による死刑の科刑は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
共謀共同正犯において、自ら手を下していない被告人であっても、犯行の支配力(発案・指示・利得の帰属)が実行犯を上回る場合には、実行犯以上の重い責任を問い得ること、および二人の殺害でも死刑が維持され得ることを示している。
事件番号: 平成20(あ)2064 / 裁判年月日: 平成23年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団間の抗争に端を発し、一般客の存在する飲食店において敢行された射殺事件について、被告人が謀議に積極的に加わり実行役も果たしている場合、犯行後の自首や謝罪等の情状を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、他団体との金銭トラブルを端に、相手方を「皆殺しに…
事件番号: 令和2(あ)124 / 裁判年月日: 令和5年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および刑法199条に死刑を定めたことは憲法9条、13条、31条、36条、98条2項に違反しない。保険金目的の計画的な殺人事件において、首謀者として主導的役割を果たし、2名の生命を奪った結果が重大である場合、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、知人らと共謀し、保険金を得る…
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…
事件番号: 昭和55(あ)493 / 裁判年月日: 昭和60年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大でやむを得ない場合に認められる。本件では、無抵抗な女性3名を殺害した残虐な犯行態様や動機の身勝手さを重視し、死刑が是認された。 第1 事案の概要…