性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は、憲法13条に違反する。 (個別意見がある。)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号と憲法13条
憲法13条、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号
判旨
性同一性障害特例法3条1項4号(生殖不能要件)は、身体への侵襲を受けない自由を保障する憲法13条に違反し無効である。治療に手術を要しない者に対し、重要な法的利益である性別変更を得るために過酷な身体的侵襲を強いる点は、現時点において必要性・合理性を欠く過剰な制約にあたる。
問題の所在(論点)
特例法3条1項4号(いわゆる生殖不能要件)が、生殖腺除去手術という身体への強度な侵襲を事実上強制する点において、憲法13条(身体への侵襲を受けない自由)に違反し無効とならないか。
規範
憲法13条は、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を保障する。公権力による制約が許容されるためには、制約の目的のために必要とされる程度と、制約される自由の内容・性質、具体的態様・程度を較量し、必要かつ合理的な制限といえなければならない。
重要事実
生物学的男性だが心理的女性である申立人が、性別変更審判を申し立てた。申立人は特例法3条1項1号〜3号の要件を満たすが、同項4号(生殖腺除去手術等による生殖機能の永続的欠如)の要件を満たしていなかったため、原審は申立てを却下した。
事件番号: 平成30(ク)269 / 裁判年月日: 平成31年1月23日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (補足意見がある。)
あてはめ
(1)目的の妥当性:本件規定の目的は親子関係の混乱防止等にあるが、既に「女である父」等の存在は許容されており、社会的混乱が生じた事跡はない。施行後の理解増進もあり、制約の必要性は低減している。(2)手段の相当性:医学的知見の進展により、生殖腺除去手術は必須の治療とはみなされなくなっており、医学的合理的関連性を欠く。一方で、性自認に従った法的性別の取得は人格的生存に関わる重要な法的利益である。(3)較量:本規定は、重要な法的利益を得るために強度な身体侵襲を甘受するか、利益を断念するかという過酷な二者択一を迫るものであり、現時点では制約が過剰で必要かつ合理的とはいえない。
結論
特例法3条1項4号は憲法13条に違反し無効である。本規定に基づき却下した原決定を破棄し、5号要件(外観要件)の判断のため原審に差し戻す。
実務上の射程
生殖不能要件を違憲無効とした大法廷決定。答案上は、人権の重要性と制約態様の過酷さを強調し、立法時の事情と現時点の医学的・社会的状況の変化を比較する枠組みで論じる。なお、外観要件(5号)については本決定の多数意見は判断を回避したが、補足意見や反対意見での言及に留意が必要。
事件番号: 令和2(ク)638 / 裁判年月日: 令和3年11月30日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (反対意見がある。)
事件番号: 令和1(ク)791 / 裁判年月日: 令和2年3月11日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号は,憲法13条,14条1項,24条に違反しない。
事件番号: 平成25(許)5 / 裁判年月日: 平成25年12月10日 / 結論: 破棄自判
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者の妻が婚姻中に懐胎した子は,民法772条の規定により夫の子と推定されるのであり,夫が妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に実質的に同条の推定を受けないということはできない。 (補足意見及び反対意…
事件番号: 令和2(ク)102 / 裁判年月日: 令和3年6月23日 / 結論: 棄却
民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)