性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (反対意見がある。)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号と憲法13条,14条1項
憲法13条,憲法14条1項,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号
判旨
性同一性障害者の性別の取扱いの変更に「現に未成年の子がいないこと」を要件とする特例法3条1項3号の規定は、憲法13条および14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
性同一性障害特例法3条1項3号が、未成年の子の存在を性別変更の欠格事由としている点が、自己同一性を保持する権利(憲法13条)や平等原則(憲法14条1項)に違反し違憲ではないか。
規範
性別変更の要件設定については、子の福祉や家族秩序の混乱防止といった立法目的の正当性および、その手段としての合理性を考慮し、立法府の裁量を尊重しつつ判断する。過去の判例の趣旨に照らし、現行の未成年の子の有無による制約は、憲法13条の個人の尊重や、14条1項の法の下の平等に反するものではない。
重要事実
性同一性障害者である申立人は、既に性別適合手術を終え、外観および社会生活において女性として行動し、氏名の変更も済ませていた。しかし、申立人には「現に未成年の子」がいたため、家庭裁判所および抗告審において、性別の取扱いの変更の申立てが特例法3条1項3号の要件を満たさないとして却下された。
事件番号: 平成30(ク)269 / 裁判年月日: 平成31年1月23日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (補足意見がある。)
あてはめ
多数意見は簡潔に既往の判例を引用するに留まるが、その背景には「女である父」や「男である母」の出現による家族秩序の混乱防止、および未成年の子の福祉への配慮という目的がある。平成20年の法改正で「子がいないこと」から「未成年の子がいないこと」へ緩和されたものの、未成熟な子への心理的影響や混乱を回避する必要性は依然として認められ、立法府の合理的な裁量の範囲内と解される。
結論
特例法3条1項3号は憲法13条、14条1項に違反せず合憲であるため、本件申立てを却下した原決定は正当である。
実務上の射程
本決定は多数意見として合憲性を維持したが、宇賀克也裁判官の反対意見では、権利制約の重大性と立法目的の合理性欠如(外観変更後の戸籍変更による追加的混乱の低減等)が詳細に論じられている。答案作成上は、現行法の合憲性を前提としつつも、目的・手段の審査において反対意見の論理を準用して憲法13条違反の主張を構成する際の有力な素材となる。なお、後に令和5年大法廷決定により同法4号(手術要件)が違憲とされたが、3号については本決定の時点では合憲とされている点に注意を要する。
事件番号: 令和1(ク)791 / 裁判年月日: 令和2年3月11日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号は,憲法13条,14条1項,24条に違反しない。
事件番号: 令和2(ク)993 / 裁判年月日: 令和5年10月25日 / 結論: 破棄差戻
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は、憲法13条に違反する。 (個別意見がある。)
事件番号: 昭和57(ク)272 / 裁判年月日: 昭和58年10月13日 / 結論: 却下
戸籍法五〇条の規定が子の名につき制限を課していることをもつて個人の氏名選択の自由を制限し、憲法一三条に違反するとの所論は、その前提を欠く。
事件番号: 平成25(許)5 / 裁判年月日: 平成25年12月10日 / 結論: 破棄自判
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者の妻が婚姻中に懐胎した子は,民法772条の規定により夫の子と推定されるのであり,夫が妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に実質的に同条の推定を受けないということはできない。 (補足意見及び反対意…