戸籍法五〇条の規定が子の名につき制限を課していることをもつて個人の氏名選択の自由を制限し、憲法一三条に違反するとの所論は、その前提を欠く。
戸籍法五〇条と憲法一三条
憲法13条,戸籍法50条
判旨
戸籍法50条が子の名に使用できる文字を制限することは、戸籍制度の公証目的から生じる合理的制限であり、憲法13条が保障する個人の氏名選択の自由を侵害するものではない。
問題の所在(論点)
戸籍法50条による子の名に使用する文字の制限が、憲法13条の保障する幸福追求権(自己決定権)としての氏名選択の自由を侵害し違憲となるか。
規範
戸籍は民法上の身分関係を公証する制度であり、その氏名選択に伝統や社会的便宜を考慮した制限を設けることは、法の趣旨・目的から正当化される。したがって、戸籍法の規定に関わらず氏名を選択し、それを戸籍上に公示すべきことを要求し得る一般的な自由ないし権利が国民に存在すると解することはできない。
重要事実
抗告人は、子の名に使用できる文字を制限する戸籍法50条の規定が、個人の氏名選択の自由を制限するものであり、憲法13条に違反すると主張して争った。
あてはめ
事件番号: 令和2(ク)638 / 裁判年月日: 令和3年11月30日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (反対意見がある。)
戸籍制度の目的は、身分行為や身分関係を公簿により一般的に公証することにある。戸籍法が届出に際し氏名の選択に一定の制限を設けているのは、かかる公証制度としての機能を維持するための合理的な制約である。また、戸籍法は戸籍上の氏名以外の呼称(通称等)を使用することを禁止しておらず、制約の態様も必要最小限度にとどまっている。したがって、戸籍上の氏名に関する限り、戸籍法の定めに従うべきであり、法規定を無視した氏名選択権を認める前提を欠いている。
結論
戸籍法50条による子の名に関する制限は、憲法13条に違反しない。
実務上の射程
人格権の一内容としての「氏名に関する権利」の限界を示す重要判例である。憲法13条の文脈では、自己決定権の対象となる利益であっても、公証制度の必要性等の合理的理由があれば、その公示方法等について法令による制約が可能であることを示唆している。答案上は、氏名選択の自由が憲法上の権利として構成され得るとしても、戸籍公証の観点から広範な立法裁量が認められるとする論理構成に活用できる。
事件番号: 昭和26(ク)191 / 裁判年月日: 昭和26年10月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告が適法となるのは、法律により特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断を不当とするもの(現行民訴法336条1項に相当)に限られる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は…
事件番号: 平成30(ク)269 / 裁判年月日: 平成31年1月23日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 令和1(ク)791 / 裁判年月日: 令和2年3月11日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号は,憲法13条,14条1項,24条に違反しない。
事件番号: 令和2(ク)993 / 裁判年月日: 令和5年10月25日 / 結論: 破棄差戻
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は、憲法13条に違反する。 (個別意見がある。)