性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (補足意見がある。)
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号と憲法13条,14条1項
憲法13条,憲法14条1項,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号
判旨
性同一性障害者の性別の取扱いの変更の審判に際し、生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあることを求める性同一性障害特例法3条1項4号は、憲法13条、14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
性同一性障害者の性別の取扱いの変更の要件として、生殖能力の喪失を求める特例法3条1項4号(本件規定)は、意思に反して身体への侵襲を受けない自由(憲法13条)や、法の下の平等(憲法14条1項)に違反しないか。
規範
特定の公的利益を目的とする法令が、個人の身体への侵襲を受けない自由を制約する場合、その憲法適合性は、規定の目的、制約の態様、現在の社会的状況等を総合的に較量して判断される。特に、家族制度や社会秩序への影響に関する配慮の必要性、手段の相当性は、社会的状況の変化に応じて不断に検討されるべきものである。
重要事実
抗告人は性同一性障害者であり、戸籍上の性別変更を求めたが、特例法3条1項4号(生殖不能要件)を満たさないとして却下された。本規定は、変更前の性別による生殖によって親子関係等の社会的な混乱が生じることを防ぎ、急激な社会変化を避けることを目的としている。一方で、この要件を満たすためには一般に生殖腺除去手術が必要となり、当事者の意思に反した身体への侵襲を事実上強いる側面がある。
事件番号: 令和2(ク)638 / 裁判年月日: 令和3年11月30日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号は,憲法13条,14条1項に違反しない。 (反対意見がある。)
あてはめ
本件規定の目的は、生殖機能を維持したままの性別変更による親子関係の混乱防止や、男女の区別に関する社会的な急激な変化の回避にある。この目的には合理性があり、制約の態様も直接的な手術の強制ではない。現在のわが国において、性自認に従った性別の取扱いや家族制度の理解に関する社会的状況を鑑みれば、上記目的のための制約は、現時点では必要かつ合理的な範囲内にとどまる。したがって、現時点での社会的状況を総合的に較量すれば、合理的根拠を欠く過大な制約とはいえない。
結論
本件規定は憲法13条、14条1項に違反しないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
判決文からは不明(ただし、多数意見は「現時点では」との限定を付しており、後の社会的状況の変化による違憲判断の可能性を否定していない)。
事件番号: 令和2(ク)993 / 裁判年月日: 令和5年10月25日 / 結論: 破棄差戻
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は、憲法13条に違反する。 (個別意見がある。)
事件番号: 令和1(ク)791 / 裁判年月日: 令和2年3月11日 / 結論: 棄却
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号は,憲法13条,14条1項,24条に違反しない。
事件番号: 令和2(ク)102 / 裁判年月日: 令和3年6月23日 / 結論: 棄却
民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)
事件番号: 平成25(許)5 / 裁判年月日: 平成25年12月10日 / 結論: 破棄自判
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者の妻が婚姻中に懐胎した子は,民法772条の規定により夫の子と推定されるのであり,夫が妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に実質的に同条の推定を受けないということはできない。 (補足意見及び反対意…