吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするための株主総会に先立って消滅株式会社等に対してされる当該吸収合併等に反対する旨の通知に当たる。 ⑴ 上記吸収合併消滅株式会社は、上記株主に対し、宛先を自社とし、「賛」又は「否」のいずれかに〇印を付けて吸収合併契約の承認に係る議案に対する賛否を記載する欄を設けた委任状用紙を送付して、議決権の代理行使を勧誘した。 ⑵ 上記株主は、上記勧誘に応じて、上記欄の「否」に〇印を付けて上記委任状を作成し、これを上記吸収合併消滅株式会社に対して返送した。
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って上記会社に対して委任状を送付したことが会社法785条2項1号イにいう吸収合併等に反対する旨の通知に当たるとされた事例
会社法785条2項1号イ
判旨
会社法785条2項1号イにいう反対通知は、株主総会に先立ち、吸収合併に反対する株主の議決権数等を会社に認識させ、対応の機会を与える趣旨である。したがって、会社が勧誘した議決権行使の委任状を株主が返送した場合、経緯や記載内容から反対の意思が会社に表明されているといえるときは、当該委任状の送付は反対通知に当たる。
問題の所在(論点)
会社が送付した議決権代理行使の勧誘に応じ、株主が賛否欄の「否」に〇を付けた委任状を返送する行為が、会社法785条2項1号イにいう「反対通知」に当たるか。
規範
会社法785条2項1号イが、株主総会に先立って会社に対し吸収合併等に反対する旨の通知(反対通知)を求めた趣旨は、消滅会社等に対し、反対株主の議決権数や買取請求の見込みを認識させ、議案可決のための対策講じや撤回検討の機会を与える点にある。したがって、株主が議決権の代理行使を委任する内容の委任状を消滅会社等に送付した場合であっても、当該委任状が作成・送付された経緯や記載内容等の事情を勘案し、反対の意思が会社に対して表明されているといえるときは、当該委任状の送付は「反対通知」に当たる。
事件番号: 平成23(許)7 / 裁判年月日: 平成24年3月28日 / 結論: 棄却
1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていたときであっても,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所…
重要事実
スジャータ社(消滅会社)は、吸収合併の承認を目的とする臨時株主総会の招集に際し、株主である抗告人に対し、宛先を自社とし本件議案への賛否欄を設けた委任状用紙を同封して議決権の代理行使を勧誘した。抗告人は、これに応じて賛否欄の「否」に〇印を付け、欄外に「内容が不明であり賛否表明ができない」旨の付記をした委任状を同社へ返送した。その後、総会で本件合併が承認され、抗告人は株式買取請求及び価格決定の申立てを行ったが、原審は委任状の送付が「反対通知」に当たらないとして申立てを却下した。
あてはめ
本件委任状は、スジャータ社が自社を宛先として送付し勧誘したものであり、抗告人による賛否欄への記載は代理人への指示に留まらず、勧誘に対する応答としてスジャータ社に向けた意思表示の側面も有する。賛否欄には「否」に〇印が付けられており、吸収合併に反対する意思は明確に表明されている。また、付記の内容は反対の理由を説明したものと解され、反対の意思表明を否定するものではない。これによれば、会社において反対株主の数等を認識し、対策を講じる機会は十分に与えられていたといえる。
結論
抗告人が委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イの反対通知に該当するため、抗告人は反対株主として株式買取請求権を行使し得る。
実務上の射程
会社側から提供されたフォーマットを用いたやり取りであっても、実質的に反対の意思が会社に伝達されたと評価できれば、会社法上の厳格な通知手続きを履践したと認められる。実務上は、書面の表題が「委任状」であっても、その実質的な機能に着目して反対通知の成否を判断すべきである。
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…
事件番号: 平成22(許)9 / 裁判年月日: 平成22年12月7日 / 結論: 破棄自判
社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
事件番号: 平成26(許)39 / 裁判年月日: 平成27年3月26日 / 結論: 破棄自判
非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできない。
事件番号: 平成23(許)21 / 裁判年月日: 平成24年2月29日 / 結論: 破棄差戻
1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移…