1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていたときであっても,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。 2 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が同請求に係る株式を失った場合は,当該株主は同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適格を欠くに至り,同申立ては不適法になる。
1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否 2 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が当該株式を失った場合における,当該株主による同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適否
(1,2につき)会社法116条1項,会社法117条2項 (1につき)(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律154条3項
判旨
振替株式の買取請求において、会社側が株主であることを争った場合、振替機関の取扱い廃止後であっても、対抗要件として個別株主通知が必要である。また、全部取得条項付種類株式の取得日が到来して株式を失った株主は、会社法117条2項に基づく買取価格決定の申立て適格を欠く。
問題の所在(論点)
1. 振替機関の取扱い廃止後において、株式買取請求の対抗要件として個別株主通知が必要か。 2. 株式買取請求後に全部取得条項付種類株式の取得日が到来して株式を失った場合、買取価格決定の申立て適格が認められるか。
規範
1. 振替株式の株式買取請求権(会社法116条1項)は、社債等振替法上の「少数株主権等」に該当する。会社側が株主であることを争う場合、審理終結時までに個別株主通知(同法154条3項)がなされることを要し、振替機関の取扱い廃止後であっても、権利行使要件の判断の困難性からこの理は維持される。 2. 株式買取請求権を行使した株主であっても、代金支払前に全部取得条項付種類株式としての取得日が到来すれば株式を喪失する(会社法173条1項)。価格決定の申立て(117条2項)は「株主」が行うものであるため、株式を喪失した者は申立て適格を欠く。
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…
重要事実
相手方(上場会社)は、普通株式を全部取得条項付種類株式に変更し、その全部を取得する旨の決議を行った。抗告人らは本決議に反対し、取得価格決定の申立て(172条1項)を行った後、さらに株式買取請求(116条1項)及び買取価格決定の申立て(117条2項)を行った。しかし、抗告人らは個別株主通知の申出をせず、また申立ての審理中に株式の取得日が到来して株式を喪失した。
あてはめ
1. 抗告人らは、相手方が株主であることを争っているにもかかわらず、審理終結までに個別株主通知を欠いている。上場廃止は予測可能であり通知は可能であったから、個別株主通知がない以上、対抗要件を欠き請求は不適法である。 2. 株式買取の効力は代金支払時に生じるが(117条5項)、それ以前に定款変更に基づく取得の効果が生じれば株主は株式を失う。抗告人らは取得日に株式を失っており、117条2項の「株主」に該当しないため、申立て適格を欠く。
結論
本件買取価格決定の申立ては、対抗要件の欠如および申立て適格の喪失という二重の理由により不適法であり、却下される。
実務上の射程
会社法上の反対株主の権利行使(買取請求)において、個別株主通知の重要性と、全部取得スキームにおける株式喪失が手続適格に及ぼす影響を明確にした。取得価格決定の申立て(172条)と株式買取請求(116条)が形式的に併存し得ることも示唆している。
事件番号: 平成23(許)21 / 裁判年月日: 平成24年2月29日 / 結論: 破棄差戻
1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移…
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…
事件番号: 平成22(許)9 / 裁判年月日: 平成22年12月7日 / 結論: 破棄自判
社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
事件番号: 平成22(許)47 / 裁判年月日: 平成23年4月26日 / 結論: 破棄差戻
会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したで…