社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否
会社法172条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律128条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律154条3項
判旨
株主による株式等売渡請求の承認に関する取締役会決議における株主名簿記載事項の通知の要否(最大判令和5年10月25日)
問題の所在(論点)
特別支配株主による株式等売渡請求の承認(会社法179条の3第1項)において、株主通知を欠いたままなされた承認決議の効力、および権利濫用の成否。
規範
会社法179条の3第1項所定の「株主通知」は、特別支配株主による株式売渡請求の承認決議において必要か。同通知の趣旨は、株主に売渡請求等の事実を知らせ、差止請求(同法179条の7)や価格決定申立て(同法179条の8)の機会を保障することにある。したがって、同通知は適法な売渡請求等の効力発生の要件であり、これを欠く場合は特段の事情がない限り、会社による承認決議の効力を否定すべき重大な手続上の瑕疵となる。
重要事実
特別支配株主である相手方は、対象会社である抗告人に対し、本件株式等売渡請求を行った。抗告人の取締役会はこれを承認する決議をしたが、会社法179条の3第1項に基づく株主名簿記載事項等の通知(株主通知)を各株主に対して行わなかった。相手方は通知の欠如を承知した上で売渡請求を進め、対価を支払ったが、通知がなされなかったことにより、一般株主が事前・事後の権利救済手段を行使する機会を逸したかどうかが争点となった。
事件番号: 平成29(許)7 / 裁判年月日: 平成29年8月30日 / 結論: 棄却
会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができない。
あてはめ
会社法は、特別支配株主の権利行使の便宜と、少数株主の対価の公正性確保という利害調整のため、株主通知を義務付けている。本件では、抗告人は一切の株主通知を行っておらず、これは同法が予定する適正な手続を看過した重大な違反にあたる。相手方は通知がなされていないことを知りながら本件請求を進めており、通知を不要とする特段の事情(例えば全株主の同意がある等)も認められない。また、本件請求が「不当な目的」に基づくものとまではいえないとしても、手続的保障を欠く以上、適法な承認決議があったとは評価できない。
結論
本件承認決議は、株主通知を欠く重大な手続違反があるため無効である。よって、これに基づく株式等売渡請求もその効力を有しない。
実務上の射程
会社法179条の3第1項の株主通知は単なる事務的規定ではなく、少数株主の権利保護のための必須要件であり、これを欠く承認決議は原則として無効となる。
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…
事件番号: 平成23(許)7 / 裁判年月日: 平成24年3月28日 / 結論: 棄却
1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていたときであっても,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所…
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…
事件番号: 平成19(許)30 / 裁判年月日: 平成19年8月7日 / 結論: 棄却
1 会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合にも及ぶ。 2 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるような場合に,その防止のために上記特定の株主を差別的に取り扱うことは,衡平の理念に反し,相当性を欠く…