1 会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合にも及ぶ。 2 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるような場合に,その防止のために上記特定の株主を差別的に取り扱うことは,衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨に反しない。 3 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,株主総会における株主自身の判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。 4 株式会社Yが株主であるXによる経営支配権取得のための株式の公開買付けに対抗して新株予約権の無償割当てを行うに当たり,新株予約権の内容につき,X及びその関係者以外の株主は割り当てられた新株予約権を行使することなどによって株式の交付を受けることができるが,X及びその関係者は割り当てられた新株予約権を行使することができず,Yは金員を交付することによって上記新株予約権を取得することができる旨の差別的な条件及び条項が定められていた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,上記新株予約権の無償割当ては,会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨に反せず,同法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しない。 (1) 上記新株予約権の無償割当てを行うことは,株主総会においてX及びその関係者以外のほとんどの株主の賛成を得て可決されたものであり,これらの株主は,Xによる経営支配権の取得が企業価値をき損し,株主の共同の利益を害することになると判断したものといえる。 (2) 上記総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず,また,上記判断はX及びその関係者において経営支配権取得後の経営方針を明示せず,投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであるとうかがわれ,当該判断にその正当性を失わせるような重大な瑕疵はない。 (3) 上記新株予約権の無償割当ては,X及びその関係者も意見を述べる機会のあった上記総会における議論を経てX及びその関係者以外のほとんどの株主が是認したものである上,YがX及びその関係者に割り当てられた新株予約権を取得するに当たり交付する金員は当該新株予約権の価値に見合うものであって,衡平の理念に反し,相当性を欠くものではない。 5 株式会社Yが株主であるXによる経営支配権取得のための株式の公開買付けに対抗して新株予約権の無償割当てを行うに当たり,新株予約権の内容につき,X及びその関係者以外の株主は割り当てられた新株予約権を行使することなどによって株式の交付を受けることができるが,X及びその関係者は割り当てられた新株予約権を行使することができず,Yは金員を交付することによって上記新株予約権を取得することができる旨の差別的な条件及び条項が定められていた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,上記新株予約権の無償割当ては,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策として事前に定められ,示されていなかったことなどを考慮しても,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しない。 (1) 上記新株予約権の無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反するものではない。 (2) 上記新株予約権の無償割当ては,Xによる経営支配権の取得の可能性が現に生じたために株主総会において企業価値のき損を防ぎ,株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしても採用する必要があると判断されて行われたもので,緊急の事態に対処するための措置である。また,X及びその関係者には,割り当てられた新株予約権の価値に見合う対価が支払われる。 (3) 上記新株予約権の無償割当ては,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するために行われるものではない。
1 株主平等の原則の趣旨は株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合に及ぶか 2 株主に対する差別的取扱いが株主平等の原則の趣旨に反しない場合 3 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについての審理判断の方法 4 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,株主平等の原則の趣旨に反せず,会社法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しないとされた事例 5 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しないとされた事例
(1〜5につき)会社法109条1項 (4につき)会社法247条1号 (5につき)会社法247条2号
事件番号: 平成29(許)7 / 裁判年月日: 平成29年8月30日 / 結論: 棄却
会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができない。
判旨
新株予約権無償割当てにおける差別的扱いは、特定の株主による経営支配権取得が企業価値を毀損し、株主の共同の利益を害する場合、適正な株主総会手続を経るなど判断の正当性を欠く重大な瑕疵がなく、衡平・相当性を保つ限り、株主平等の原則の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
特定の株主を差別的に扱う新株予約権の無償割当てが、株主平等の原則(会社法109条1項)に違反するか。また、買収防衛策としてなされる当該割当てが「著しく不公正な方法」(同法247条2号)に該当するか。
規範
1. 株主平等の原則(会社法109条1項)の趣旨は、新株予約権無償割当てにも及ぶ。2. 特定の株主による支配権取得で企業価値が毀損される場合、その防止のための差別的取扱いは、衡平の理念に反し相当性を欠かない限り、同原則の趣旨に反しない。3. 企業価値毀損の有無は、株主総会の手続に適正を欠くなどの重大な瑕疵がない限り、株主自身の判断が尊重されるべきである。4. 差別的割当てが専ら特定の取締役等の保身目的である場合は、原則として「著しく不公正な方法」(同法247条2号)に当たる。
重要事実
投資ファンドである抗告人(スティール・パートナーズ)が、ソース製造販売会社である相手方(ブルドックソース)に対し、支配権取得を目的とする公開買付け(TOB)を実施した。これに対し相手方は、抗告人による支配が企業価値を毀損すると判断し、抗告人のみを「非適格者」として権利行使を制限し、かつ他株主には株式を、抗告人には現金を交付する取得条項付の新株予約権無償割当てを計画した。本施策は株主総会において議決権の約83.4%の賛成で可決された。抗告人は本割当てが株主平等の原則に反し、著しく不公正な方法であるとして差止めを申し立てた。
あてはめ
1. 企業価値の判断について、本件では抗告人が具体的な経営方針や投下資本回収方針を明示しなかったことから、抗告人による支配が企業価値を毀損するという株主総会の判断には重大な瑕疵がなく、尊重されるべきである。2. 相当性について、抗告人は差別的扱いを受けるが、株主総会での議論を経て既存株主の圧倒的多数が是認しており、かつ抗告人にはTOB価格に見合う現金の対価が支払われるため、衡平・相当性を欠くとはいえない。3. 事前警告型の防衛策でなかった点も、緊急の事態に対処するための措置であり、対価の支払もあることから不公正とはいえない。4. 目的についても、保身目的ではなく企業価値維持のためと認められる。
結論
本件新株予約権無償割当ては、株主平等の原則の趣旨に反せず、法令等に違反しない。また、著しく不公正な方法によるものともいえないため、差止めは認められない。
実務上の射程
敵対的買収防衛策の適法性判断において「株主意思」を決定的な判断要素とした重要判例。差別的行使条件を付す場合でも、適正な総会決議(特別決議等)を経ており、かつ差別を受ける株主に経済的損失を補填する等の配慮があれば、株主平等の原則の例外として許容され得る。答案上は、企業価値毀損の有無に関する株主総会の判断の尊重、及び手段の相当性の検討が不可欠である。
事件番号: 平成22(許)9 / 裁判年月日: 平成22年12月7日 / 結論: 破棄自判
社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…
事件番号: 平成28(許)24 / 裁判年月日: 平成29年2月21日 / 結論: 棄却
取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である。
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…