取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である。
取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めの効力
会社法295条2項,会社法362条2項3号
判旨
取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会の決議に加え、株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは、取締役会の監督権限を失わせるものではなく有効である。
問題の所在(論点)
取締役会設置会社(非公開会社)において、定款により代表取締役の選定権限を株主総会に与えることの可否。具体的には、かかる定款の定めが会社法295条2項の範囲内として有効か、あるいは取締役会の権限を侵害し無効となるかが問題となる。
規範
非公開の取締役会設置会社において、定款で株主総会の決議事項を定めることは、会社法295条2項により認められており、内容を制限する明文規定もない。また、株主総会に代表取締役の選定権限を付与しても、取締役会による代表取締役の選定・解職権限(同法362条2項3号)や監督権限が否定されるわけではないため、公序良俗や会社法の基本的枠組みに反せず有効である。
重要事実
非公開会社かつ取締役会設置会社である相手方会社において、定款に「代表取締役は取締役会の決議によって定めるが、必要に応じ株主総会の決議によっても定めることができる」旨の規定(本件定め)が存在した。同社の代表取締役であった抗告人は、本件定めに基づき株主総会で選任された新たな代表取締役について、本件定めは取締役会の監督権限を弱めるため無効であると主張し、職務執行停止等の仮処分を申し立てた。
事件番号: 平成19(許)30 / 裁判年月日: 平成19年8月7日 / 結論: 棄却
1 会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合にも及ぶ。 2 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるような場合に,その防止のために上記特定の株主を差別的に取り扱うことは,衡平の理念に反し,相当性を欠く…
あてはめ
まず、非公開会社は取締役会の設置が任意であり(法327条1項1号参照)、その自治が尊重されるべきである。本件定めは法295条2項に基づき定款で決議事項を拡張するものであるが、これによって法362条2項3号が定める取締役会自身の選定・解職権限が奪われるわけではない。したがって、代表取締役が株主総会で選任されたとしても、依然として取締役会による監督(法362条2項2号)は可能であり、監督権限の実効性が失われるとはいえない。
結論
取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会のほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である。
実務上の射程
本判決は非公開会社に射程を限定している点に注意が必要である。所有と経営が分離している公開会社においては、取締役会の監督権限の重要性がより高く、同様の定款規定が認められない可能性がある。答案上は、法295条2項の「定款で定めた事項」の限界を示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和47年2月3日 / 結論: 棄却
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。 二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職…
事件番号: 昭和57(オ)1419 / 裁判年月日: 昭和59年9月28日 / 結論: 棄却
株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
事件番号: 令和4(許)3 / 裁判年月日: 令和4年6月27日 / 結論: 破棄自判
株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法423条1項に基づく損害賠償責任を追及する訴訟を提起した場合において、上記委員会が被告の上記責任の有無等を調査、検討するために設置され…
事件番号: 昭和48(オ)794 / 裁判年月日: 昭和51年12月24日 / 結論: 棄却
一、株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても、株主である地方公共団体、株式会社が、その職制上上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使にあたつて法人の代表者の意図に反することができないようになつている職員又は従業員に議決権を代理行使させることは、右定款の規定に反しな…