会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができない。
会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者が,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることの可否
会社法179条1項,会社法179条の4第1項1号,会社法179条の8第1項,社債,株式等の振替に関する法律161条2項
判旨
特別支配株主による株式売渡請求(会社法179条1項)において、会社による公告または通知がされた後に売渡株式を譲り受けた者は、売買価格決定の申立て(179条8項1項)をすることができない。
問題の所在(論点)
会社法179条8項1項に基づき売買価格決定の申立てをすることができる「売渡株主」の範囲。特に、株式売渡請求の通知または公告がなされた後に売渡株式を譲り受けた者がこれに含まれるか。
規範
会社法179条8項1項が売買価格決定の申立ての制度を設けた趣旨は、株式売渡請求の通知・公告により、その意思にかかわらず定められた対価で株式を売り渡すこととなる株主に対し、適正な対価を得る機会を与えることにある。したがって、同項に基づき売買価格決定の申立てをなし得る者は、当該通知・公告時点における株主に限られ、その後に株式を譲り受けた者は保護の対象外と解すべきである。
重要事実
1. 特別支配株主(利害関係参加人)が、本件対象会社に対し株式売渡請求をする旨および対価の額等を通知した。 2. 本件対象会社は当該請求を承認し、法定事項を公告した(本件公告)。 3. 抗告人は、本件公告がなされた後に、本件対象会社の売渡株式のうち3000株を譲り受けた。 4. 抗告人は、裁判所に対し、本件株式について会社法179条8項1項に基づく売買価格決定の申立てを行った。
事件番号: 平成22(許)9 / 裁判年月日: 平成22年12月7日 / 結論: 破棄自判
社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
あてはめ
1. 株式売渡請求においては、対象会社の承認および通知・公告により、個々の株主の承諾なく法律上当然に売買契約と同様の法律関係が生じる(179条4項1項・3項)。 2. 本件公告の時点で、その時点の株主が意思に反して株式を売り渡すことが確定しており、制度趣旨に照らせば、この時点の株主こそが申立権を有する者といえる。 3. 抗告人が本件株式を譲り受けたのは本件公告後であり、株式を売り渡すことが確定した後に自らその地位を取得した者にすぎない。 4. よって、抗告人は179条8項1項による保護の対象として想定されている者には当たらないと評価される。
結論
抗告人は本件公告後に株式を譲り受けた者であるから、売買価格決定の申立てをすることができない。したがって、本件申立てを却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
特別支配株主による株式売渡請求(スクイーズ・アウト)の局面における、反対株主の救済手段(価格決定申立て)の主体的範囲を画定したものである。
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…
事件番号: 平成19(許)30 / 裁判年月日: 平成19年8月7日 / 結論: 棄却
1 会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合にも及ぶ。 2 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるような場合に,その防止のために上記特定の株主を差別的に取り扱うことは,衡平の理念に反し,相当性を欠く…
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…
事件番号: 平成23(許)7 / 裁判年月日: 平成24年3月28日 / 結論: 棄却
1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていたときであっても,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所…