遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。
遺言により相続分がないものと指定され、遺留分侵害額請求権を行使した相続人は、特別寄与料を負担するか
民法902条、民法1046条、民法1050条
判旨
遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、民法1050条5項の規定に基づき、特別寄与料を負担しない。
問題の所在(論点)
遺言により相続分を「ないもの」と指定された相続人が、遺留分侵害額請求権を行使した場合、民法1050条5項の「各相続人は…算定した相続分に応じた額を負担する」という規定に基づき、特別寄与料の負担義務を負うか。
規範
民法1050条5項は、相続人が数人ある場合の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、紛争の複雑化・長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる「法定相続分等」という明確な基準によることとしたものである。したがって、同項が規定しない事情である「遺留分侵害額請求権の行使」によって、上記負担割合が修正されることはない。
重要事実
被相続人Aの相続人は子であるB及び相手方の2名であり、抗告人はBの妻である。Aは生前、全財産をBに相続させる旨の遺言(相手方の相続分をゼロとする趣旨を含む)をしていた。相手方はBに対し、遺留分侵害額請求権を行使した。これに対し、Bの妻である抗告人が、相手方に対し、民法1050条に基づき特別寄与料の支払を求めて本件処分を申し立てた。
事件番号: 令和2(許)44 / 裁判年月日: 令和3年10月28日 / 結論: その他
財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し,夫又は妻であった者である相手方は,即時抗告をすることができる。
あてはめ
民法1050条5項の趣旨は、遺言の有無や内容から一義的に定まる法定相続分等を基準とすることで、紛争処理の迅速化を図る点にある。本件において、被相続人Aの遺言は相手方の相続分を「ないもの」と指定しており、これによれば相手方の負担割合はゼロとなる。遺留分侵害額請求は債権的効力を生じさせるものにすぎず、同条項が定める算定基準としての「遺言の内容により定まる相続分」自体を事後的に変更させるものではない。
結論
遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。
実務上の射程
特別寄与料の負担者が「相続人」に限定され、かつその割合が形式的な相続分基準(法定相続分・指定相続分)に拘束されることを明確にした。答案上は、特別寄与料の負担義務の有無を判断する際、遺留分侵害額請求による具体的利得の有無にかかわらず、1050条5項の文言通りに計算すべきという論拠として用いる。
事件番号: 平成16(許)11 / 裁判年月日: 平成16年10月29日 / 結論: 棄却
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相…
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 平成24(ク)984 / 裁判年月日: 平成25年9月4日 / 結論: 破棄差戻
1 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。 2 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前…
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民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)