財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し,夫又は妻であった者である相手方は,即時抗告をすることができる。
財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し相手方が即時抗告をすることの許否
家事事件手続法156条5号
判旨
財産分与の申立てを却下する審判に対し、申立人の相手方(元配偶者)は、審判の内容等の具体的な事情にかかわらず、当然に抗告の利益を有し、即時抗告をすることができる。
問題の所在(論点)
財産分与の申立てを却下する審判に対し、その相手方(元配偶者)は抗告の利益を有し、即時抗告をすることができるか(家事事件手続法156条5号の解釈)。
規範
家事事件手続法156条5号が、財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対して夫又は妻であった者が即時抗告をすることができると定めているのは、当該審判の内容等の具体的な事情のいかんにかかわらず、夫又は妻であった者はいずれも当然に抗告の利益を有するものとして、即時抗告権を付与したものである。
重要事実
元夫婦である相手方と抗告人は、平成29年に離婚した。相手方は令和元年に財産分与の調停を申し立て、不成立により審判へ移行した(第1事件)。一方で抗告人は、令和2年に自らも財産分与の審判を申し立てた(第2事件)。原々審は両事件の申立てをいずれも却下した。これに対し抗告人が即時抗告をしたところ、原審は、第1事件の却下審判は抗告人にとって最も有利な内容であり抗告の利益がないとして、不適法却下としたため、抗告人が許可抗告をした。
事件番号: 令和1(許)16 / 裁判年月日: 令和2年8月6日 / 結論: 破棄差戻
家庭裁判所は,財産の分与に関する処分の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき,当該他方当事者に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者に対し,当…
あてはめ
家事事件手続法156条5号の規定に照らせば、同法は財産分与に関する審判手続きにおいて、当事者双方に一律に抗告権を認めていると解される。本件第1事件において、抗告人は「妻であった者」に該当する。原審は、却下審判が抗告人にとって有利であるから不服はないと判断したが、同条の趣旨は具体的な利害得失を問わず手続保障として抗告権を付与したものである。したがって、相手方の申立てが却下された場合であっても、抗告人は当然に抗告の利益を有する。
結論
財産分与の申立てを却下する審判に対し、相手方である元配偶者は即時抗告をすることができる。
実務上の射程
財産分与審判における抗告の利益を形式的に認めた重要判例である。答案上は、家事事件における不服申立ての可否が問われた際、審判内容の有利不利にかかわらず、条文(家事法156条5号)に基づき一律に抗告権が認められる根拠として引用すべきである。
事件番号: 昭和26(ク)173 / 裁判年月日: 昭和26年10月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、民事訴訟法により特に最高裁判所への抗告が許容される場合に限定される。したがって、憲法適合性に関する判断を不当とする理由がない抗告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対して最高裁判所への抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由と…
事件番号: 昭和26(ク)135 / 裁判年月日: 昭和26年8月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする抗告(旧民訴法419条の2)のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その抗告理由は、原決定における法律…
事件番号: 昭和26(ク)2 / 裁判年月日: 昭和26年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に認められた場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条1項)に基づく特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件(具体的な原審の内容は判決文からは不明)の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申…
事件番号: 昭和25(ク)94 / 裁判年月日: 昭和25年9月7日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行の特別抗告等)に規定される抗告のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して民事事件の抗告を申し立てた。しかし、当該抗告は…