被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。
被相続人を保険契約者及び被保険者とし共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権と民法903条
民法903条,商法673条,商法675条1項
判旨
生命保険金は、特段の事情がない限り、特別受益(民法903条1項)に該当せず、同条の類推適用もされない。ただし、保険金額の総額や遺産総額に対する比率等を考慮し、相続人間で到底看過できないほどの不公平が生じる特段の事情がある場合に限り、同条を類推適用して持戻しの対象となる。
問題の所在(論点)
受取人が指定された死亡保険金請求権が、民法903条1項の特別受益にあたるか。または、同条の類推適用により持戻しの対象となるか。
規範
生命保険金受取権は、保険契約に基づき受取人の固有の権利として取得されるものであり、被相続人の財産を承継したものではないから、原則として民法903条1項の遺贈または贈与には当たらない。もっとも、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が、民法903条の趣旨(共同相続人間の実質的公平)に照らし、到底看過できないほどに著しいものであるときは、同条を類推適用して持戻しの対象とすべきである。この判断にあたっては、保険金の額、遺産の総額に対する比率、同居の有無、介護等への貢献度、各相続人の生活実態等を総合考慮する。
事件番号: 平成17(許)14 / 裁判年月日: 平成17年10月11日 / 結論: 破棄差戻
相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない
重要事実
被相続人Aが死亡し、共同相続人は子であるXおよびYの2名であった。遺産総額は約1億100万円であったが、YはAを被保険者とする生命保険金(死亡給付金等)合計約1億200万円を受領した。Xは、Yが受領した生命保険金は特別受益にあたるとして、遺産分割において持戻しの対象とすべきであると主張した。
あてはめ
本件における保険金の総額は約1億200万円であり、遺産総額(約1億100万円)とほぼ同額、あるいはそれ以上の規模に達している。このように、特定の相続人が多額の保険金を受領する一方で、他の相続人が受領できる遺産との間に顕著な差が生じている状況は、相続人間の公平を著しく害する可能性がある。裁判所は、保険金の額と遺産総額との比率やその他の諸事情を総合考慮し、特段の事情の有無を判断すべきである(本件では当該事情を審理させるため原審を差し戻した)。
結論
生命保険金は原則として特別受益に当たらないが、保険金額の遺産総額に対する比率等が極めて高く、相続人間の不公平が到底看過できないほど著しい場合には、例外的に民法903条を類推適用して持戻しの対象とする。
実務上の射程
保険金が遺産総額の5割を超えるようなケースでは、本判例の「特段の事情」の検討が必須となる。答案では、まず原則として固有の権利であることを示し、次に本判例の総合考慮要素(比率、同居・介護等の事情)を具体的事実から拾い、不公平の程度を評価して類推適用の可否を論じる。
事件番号: 平成27(許)11 / 裁判年月日: 平成28年12月19日 / 結論: 破棄差戻
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 平成11(受)1136 / 裁判年月日: 平成14年11月5日 / 結論: 棄却
自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は,民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく,これに準ずるものということもできない。
事件番号: 平成20(ク)1193 / 裁判年月日: 平成21年9月30日 / 結論: 棄却
民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
事件番号: 令和4(許)14 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 棄却
遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。