相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない
相続が開始して遺産分割未了の間に第2次の相続が開始した場合において第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときの持戻しの要否
民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法903条,民法907条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条
判旨
数次の相続が発生し、第一次相続の遺産分割が未了のうちに第二次相続が開始した場合、第一次相続に係る遺産共有持分権は第二次相続の遺産を構成し、遺産分割の対象となる。この際、第二次相続の共同相続人の中に特別受益者がいるときは、当該持分権を対象とする分割においても特別受益の持戻しをすべきである。
問題の所在(論点)
数次相続において、第一次相続の遺産分割前に相続人が死亡した場合、その相続人が有していた「第一次相続の遺産に対する共有持分権」は、第二次相続において遺産分割の対象となるか。また、その分割に際して第二次相続における特別受益の持戻しを適用すべきか。
規範
1. 遺産は、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有持分権は実体上の権利であって遺産分割の対象となる。 2. 第一次相続の分割未了間に第二次相続が開始した場合(数次相続)、被相続人が取得していた第一次相続の遺産についての共有持分権は第二次相続の遺産を構成する。したがって、これを第二次相続の共同相続人に分属させるには遺産分割手続を経る必要があり、その算定にあたっては民法903条の規定に基づき、第二次相続における特別受益の持戻しを考慮しなければならない。
重要事実
事件番号: 平成16(許)11 / 裁判年月日: 平成16年10月29日 / 結論: 棄却
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相…
1. 被相続人甲が死亡し、その相続人は妻乙、子A(抗告人)、子B・C(相手方ら)であった。 2. 甲の遺産分割が未了のうちに、妻乙が死亡し第二次相続が発生した。乙の相続人はA・B・Cである。 3. 乙は特定の不動産をXに相続させる遺言をしていたが、それ以外に固有の財産を有していなかった。 4. Aらは、乙の相続人であるCが乙から特別受益(生前贈与)を受けたと主張した。 5. 原審は、乙が甲の遺産に対して有していた地位は「抽象的な法的地位」にすぎず、当然にA・B・Cに承継されるため、遺産分割の対象とならず特別受益も考慮できないとして、Cの特別受益を考慮せずに甲の遺産を分割した。
あてはめ
1. 遺産共有の性質は、基本的には民法249条以下の共有と同様の実体上の権利である。乙は甲の相続開始と同時に、甲の遺産について相続分に応じた共有持分権を取得している。 2. この持分権は乙の遺産を構成する実体的な権利である。乙固有の他の財産がない場合であっても、この持分権を相続人A・B・Cに分属させるためには、遺産分割手続を経なければならない。 3. 遺産分割手続を経る以上、共同相続人の中に乙から特別受益を受けた者がいるのであれば、公平な分配を図るため民法903条による持戻しを行い、各人の具体的相続分を算定すべきである。したがって、乙からCへの贈与の有無を審理せずに具体的相続分を算定した原審の判断は失当である。
結論
被相続人が有していた第一次相続の遺産共有持分権は、第二次相続の遺産分割の対象に含まれる。したがって、第二次相続の共同相続人に特別受益がある場合は、当該持分権の分割においても特別受益の持戻しをして具体的相続分を算定すべきである。
実務上の射程
数次相続が発生した場合の具体的相続分の算定方法を明示した重要判例である。答案上は、遺産共有持分権が「実体上の権利」であることを根拠に、遺産分割手続(および特別受益の持戻し)が必要であることを論理づける際に用いる。また、第一次相続と第二次相続の遺産分割が併合審理される実務上の場面を想定した処理を導く指針となる。
事件番号: 平成27(許)11 / 裁判年月日: 平成28年12月19日 / 結論: 破棄差戻
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 平成21(ク)1027 / 裁判年月日: 平成23年3月9日 / 結論: 却下
抗告人と相手方との間において,抗告後に,抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解が成立した場合には,当該抗告は,抗告の利益を欠く。
事件番号: 平成15(許)21 / 裁判年月日: 平成15年11月13日 / 結論: 破棄差戻
1 各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間は,相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行する。 2 各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間については,告知を受けた日のうち最も遅い日から全員について一律に進行するとの見解に基づく取…
事件番号: 平成21(受)1097 / 裁判年月日: 平成22年12月16日 / 結論: その他
不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されない。