共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。 (補足意見及び意見がある。)
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか
民法264条,民法427条,民法898条,民法907条
判旨
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。預貯金債権の性質(決済手段性や払戻しの制限)や遺産分割制度の趣旨である実質的公平の観点から、これまでの判例を変更し、準共有状態が維持されると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか、それとも遺産分割の対象となるか。
規範
相続財産が金銭給付を目的とする可分債権であっても、遺産分割制度が共同相続人間の実質的公平を図ることを目的とするものである以上、できる限り幅広く遺産分割の対象とすることが望ましい。特に預貯金債権は、①預入れや払戻しが繰り返される継続的取引であり、口座全体で1個の債権として扱われるという同一性・変動性があること(普通預金・通常貯金)、②契約上分割払戻しが制限され事務の定型化・簡素化が図られていること(定期貯金)、③現金に近い決済手段として機能していること等の性質を有する。したがって、預貯金債権は相続開始と同時に当然分割されず、遺産分割までの間は共同相続人の準共有に属し、遺産分割の対象に含まれる。
重要事実
被相続人Aの共同相続人である抗告人と相手方との間での遺産分割事件。Aは不動産のほか、複数の銀行に普通預金、通常貯金、定期貯金を有していた。相手方はAから約5500万円の生前贈与を受けており、これは特別受益に当たる。原審は、預貯金債権は可分債権であり相続開始と同時に当然分割されるため、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないと判断した。その結果、特別受益を考慮した具体的相続分による調整が預貯金に対して行われず、抗告人に不利な分配となっていた。
事件番号: 平成17(許)14 / 裁判年月日: 平成17年10月11日 / 結論: 破棄差戻
相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない
あてはめ
普通預金等は口座単位で管理され、預貯金契約上の地位を準共有する相続人が全員で解約しない限り、残高が変動し得る1個の債権として存続する。これを当然分割されると解することは、入出金のたびに煩雑な計算を強いることになり当事者の合理的意思に反する。また定期貯金も、その利率の高さの前提として分割払戻しの制限が契約の要素となっており、当然分割は事務の簡素化という趣旨に反する。さらに、預貯金は確実かつ簡易に換価できる点で現金に近く、これを遺産分割の対象に含めることで、本件のような特別受益が存在する場合でも具体的相続分に基づいた実質的公平な調整が可能となる。したがって、本件預貯金は当然分割の対象とはならない。
結論
預貯金債権は遺産分割の対象となる。よって、預貯金を対象外とした原決定には法令の違反があり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
可分債権の当然分割原則(最大判昭29.4.8等)に対する預貯金債権特有の例外を認めた大法廷判決。答案では「実質的公平」と「預貯金の法的性質(事務の定型化、決済手段性)」をセットで論じる。なお、遺産分割前の資金需要に対しては、家事事件手続法200条2項の仮分割の仮処分の活用が示唆されている点に注意が必要である(※後の法改正により民法909条の2等の預貯金払戻し制度が新設された点も実務上重要)。
事件番号: 平成28(受)579 / 裁判年月日: 平成29年4月6日 / 結論: その他
共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
事件番号: 平成16(許)11 / 裁判年月日: 平成16年10月29日 / 結論: 棄却
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相…
事件番号: 平成20(ク)1193 / 裁判年月日: 平成21年9月30日 / 結論: 棄却
民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
事件番号: 昭和26(ク)220 / 裁判年月日: 昭和26年12月10日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法適合性の判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告人は、原決定の憲法適合性に関する判断の不当を主張の根拠としておらず、…