自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は,民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく,これに準ずるものということもできない。
自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為と民法1031条に規定する遺贈又は贈与
民法1031条,商法675条1項
判旨
自己を被保険者とする生命保険契約の受取人を変更する行為は、民法1031条(旧法)の遺贈または贈与に当たらず、遺留分減殺の対象とはならない。
問題の所在(論点)
生命保険契約の受取人を変更する行為が、遺留分減殺請求の対象となる「遺贈または贈与」に含まれるか、あるいはこれらに準ずるものとして扱われるか。
規範
生命保険契約の保険金受取人を指定・変更する行為は、遺贈(民法964条)または贈与(同549条)に当たらず、これらに準ずるものとも解されない。死亡保険金請求権は、指定された受取人が固有の権利として取得するものであり、相続財産を構成しないため、遺留分減殺の対象とならない。
重要事実
保険契約者(被保険者)が、自己を被保険者とする生命保険契約において死亡保険金の受取人を変更した。これに対し、契約者の死後、遺留分を侵害されたと主張する相続人が、受取人の変更が遺贈または贈与に当たるとして、遺留分減殺請求(民法1031条・旧法)を提起した。
あてはめ
死亡保険金請求権は、受取人が自己の固有の権利として取得するものであり、被相続人から承継取得するものではない。また、当該請求権は被保険者の死亡時に初めて発生するものであり、払い込まれた保険料と等価関係にあるわけでも、稼働能力に代わる給付でもない。したがって、死亡保険金が実質的に被相続人の財産に属していたとはいえないため、その受取人変更を遺贈や贈与と同視することはできない。
結論
生命保険の受取人変更は遺贈・贈与に当たらないため、遺留分減殺請求の対象とはならない。
実務上の射程
本判決は、保険金請求権が相続財産に含まれないという原則を貫徹したものである。答案上は、特別受益(民法903条)の議論と混同しないよう注意が必要である。なお、平成16年最高裁決定により、保険金受取人と他の相続人との間に「特段の事情」がある場合には、例外的に持戻しの対象(特別受益)となり得るが、遺留分減殺の対象性については本判決の法理が維持されている。
事件番号: 昭和63(オ)1748 / 裁判年月日: 平成4年3月13日 / 結論: 破棄自判
普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した…
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被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相…