一 養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。 二 前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。
一 保険金受取人を「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定したときの養老保険契約の性質。 二 前項の場合における保険金請求権の帰属。
商法675条,民法896条
判旨
保険金受取人を「相続人」と指定した養老保険契約において、当該保険金請求権は、特段の事情のない限り、保険金請求権発生当時の相続人の固有財産となり、被保険者の遺産には属さない。
問題の所在(論点)
保険契約において受取人を「相続人」と抽象的に指定した場合、当該保険金請求権は被保険者の「遺産」となるか、あるいは指定された相続人の「固有財産」となるか。
規範
保険金受取人を「被保険者の死亡の場合はその相続人」と抽象的に指定した場合であっても、保険事故発生時に被指定者を特定し得る以上、その指定は有効である。特段の事情のない限り、この指定は保険金請求権発生当時の相続人たるべき個人を受取人として指定した「他人のための保険契約」と解すべきであり、当該請求権は保険契約の効力発生と同時に相続人の固有財産となり、被保険者の遺産から離脱する。
重要事実
保険契約者兼被保険者である亡Aが、生命保険会社との間で養老保険契約を締結した。その際、保険金受取人について、保険期間満了の場合は「被保険者」、被保険者死亡の場合は「その相続人」と指定していた。その後、Aが死亡したため、Aの包括受遺者である上告人が、当該保険金は遺産に含まれるものである(又は包括受遺者も受取人に含まれる)と主張して争った。
あてはめ
本件契約では受取人が「相続人」と指定されており、保険事故(被保険者の死亡)の時点においてその対象者を客観的に特定することが可能である。契約者の合理的な意思を推測すれば、これは特定の氏名を挙げずとも、発生当時の相続人という個人を受取人として指定した他人のための保険契約を締結したものと解される。したがって、本件保険金請求権はAの死亡と同時に相続人らの固有財産として発生し、包括遺贈の対象となるAの相続財産(遺産)を構成することはない。
結論
保険金受取人を「相続人」と指定した場合、保険金請求権は相続人の固有財産となり、遺産には属さない。したがって、遺産であることを前提とする上告人の主張は認められない。
実務上の射程
生命保険金が相続財産に含まれるか否かという相続法・保険法の頻出論点におけるリーディングケースである。答案上は、保険金請求権が契約から直接発生する「固有の権利」であることを示し、特別受益(民法903条)の準用の可否などの後続の論点へとつなげる基礎として活用する。
事件番号: 昭和63(オ)1748 / 裁判年月日: 平成4年3月13日 / 結論: 破棄自判
普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した…