普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した当時において生存する者を保険金受取人とすることにあると解すべきである。
生命保険の保険金受取人が死亡した場合における保険金受取人の変更に関する普通保険約款の解釈
民法91条,商法676条
判旨
保険金受取人の死亡後に変更手続がないまま保険事故が発生した場合、受取人の地位は保険事故発生時に生存する受取人の法定相続人(または順次の法定相続人)に確定し、死亡した受取人の相続財産には帰属しない。
問題の所在(論点)
保険金受取人の死亡後に再指定がないまま保険事故が発生した場合における保険金請求権の帰属先、および約款上の「法定相続人への変更」条項が、途中で死亡した相続人(本件ではD)の相続財産に保険金請求権を帰属させる趣旨か否か(保険法46条、旧商法676条2項の特約の解釈)。
規範
保険金受取人が死亡し、保険契約者が受取人を変更しないまま保険事故が発生した場合、保険契約上の特約(「受取人が死亡したときはその法定相続人に変更されたものとする」旨の規定)の趣旨は、保険事故発生時において現に生存する受取人の法定相続人(または順次の法定相続人)を保険金受取人とすることにある。したがって、保険契約者が受取人の地位を取得した後に死亡した場合であっても、受取人の地位はさらにその法定相続人に承継され、死亡した保険契約者の相続財産に保険金請求権が帰属することはない。
重要事実
保険契約者兼被保険者Dは、受取人をEとする定期保険契約を締結した。約款には「受取人死亡後、変更がないときはその死亡時の法定相続人に変更されたものとする」との条項があった。受取人Eが死亡し、その法定相続人はD・F・Gであったが、Dは受取人を変更しないまま死亡した。Dの相続人は全員相続放棄したため、Dの相続財産管理人(被上告人)が、Dに帰属した保険金請求権(全体の3分の1)の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件約款の条項は、保険事故発生まで契約者が受取人を自由に変更できることを前提としている。そうである以上、保険事故発生により変更の余地がなくなるまでは、受取人の地位は確定しないと解すべきである。また、受取人が契約者自身に変更された場合であっても、生命保険の性質が「自己のため」のものに変わるわけではない。本件では、Eの死亡によりD・F・Gが受取人候補となったが、その後Dが死亡したため、Dの地位はさらにその法定相続人へと変更され、最終的に生存していたF・Gが受取人として確定した。ゆえに、既に死亡したDの相続財産に保険金請求権が留保されることはない。
結論
FおよびGが平等の割合で保険金請求権を取得し、死亡したDの相続財産(被上告人)には保険金請求権は帰属しない。
実務上の射程
保険金受取人が死亡した際の処理を定めた約款の解釈基準を示す。受取人が「相続財産」として承継されるのではなく、事故発生時に生存する相続人の「固有の権利」として確定するという原則(最高裁昭和40年1月22日判決等)を、約款がある場合にも維持したものといえる。答案上は、保険金請求権の固有権性を論じる際の補強材料として活用できる。
事件番号: 平成3(オ)1993 / 裁判年月日: 平成6年7月18日 / 結論: 破棄差戻
保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。