一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する者をいう。 二 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になる。
一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」の意義 二 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合の各保険金受取人の権利の割合と民法四二七条の適用
商法676条,民法427条
判旨
保険金受取人が死亡し、再指定がないまま被保険者が死亡した場合、保険金受取人の法定相続人(順次の法定相続人を含む)が被保険者の死亡時に現に生存していれば保険金受取人となる。この場合の各受取人の権利割合は、相続分によらず、民法427条に基づき平等の割合となる。
問題の所在(論点)
保険金受取人が先に死亡し、保険契約者兼被保険者が再指定をせずに死亡した場合において、旧商法676条2項により保険金受取人となる者の範囲、および受取人が複数いる場合の権利割合が、相続分に従うのか平等の割合になるのかが問題となる。
規範
1. 旧商法676条2項(現行保険法46条)にいう「受取人の相続人」とは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって、被保険者の死亡時に現に生存する者を指す。同条項は受取人不在を避けるための補充規定であり、該当者は保険金請求権を原始的に取得する。 2. 複数の者が保険金受取人となった場合、各受取人の権利の割合は、民法427条の規定により平等の割合になる。本規定は地位の相続承継を定めるものではなく、受取人の地位に着目して受取人を決定する規定にすぎないため、相続分の規定は適用されない。
重要事実
保険契約者兼被保険者Dは、母Eを死亡保険金受取人とする生命保険契約を締結した。その後、受取人Eが死亡し、次いでDが受取人の再指定をしないまま死亡した。Eの法定相続人はD及び上告人ら4名であった。Dの法定相続人には、上告人らのほかに11名の異母兄姉等がいた。上告人らは、保険金請求権は相続により承継されるべきであり、Dの相続分を考慮せず上告人らのみが権利者である旨を主張した。
あてはめ
1. 指定受取人EがDより先に死亡し、再指定がないまま被保険者Dが死亡したため、Eの法定相続人及びその順次の法定相続人が受取人となる。Eの相続人はDと上告人らであり、Dが死亡しているため、Dの相続人である異母兄姉等11名も「順次の法定相続人」として受取人に含まれる。 2. 保険金請求権は、相続によって承継されるものではなく、保険事故の発生により各受取人が原始的に取得するものである。したがって、各人の取得割合に民法の相続分に関する規定は適用されず、特段の別段の意思表示がない限り、民法427条の原則に従い、合計14名の受取人が平等の割合(各14分の1)で取得すると解される。
結論
上告人ら4名及びDの相続人11名の計14名が受取人となり、上告人らの請求は各14分の1の限度で認められる。
実務上の射程
受取人指定がある場合の「保険金請求権の固有財産性」を補強する判例として重要である。相続分に従わず「平等の割合」とする結論は、実務上の画一的処理を優先したものといえる。答案では、保険金請求権が「受取人の固有財産」であることの帰結として、相続分による修正が及ばないことを論証する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和63(オ)1748 / 裁判年月日: 平成4年3月13日 / 結論: 破棄自判
普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した…