保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。
保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合において相続人が保険金を受け取るべき権利の割合
商法675条,民法427条
判旨
保険契約者が死亡保険金受取人を「相続人」と指定した場合、特段の事情のない限り、各相続人が保険金を受け取るべき権利の割合は相続分の割合によると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
保険契約者が死亡保険金の受取人を「相続人」と指定した場合、複数の相続人が取得する保険金請求権の割合は、民法427条の原則通り「平等」か、それとも「相続分の割合」によるか。
規範
保険契約者が受取人を単に「相続人」と指定する趣旨は、保険事故発生時における相続人を確定させる点にある。また、各相続人に対してその相続分の割合により保険金を取得させる趣旨も含まれていると解するのが契約者の通常の意思に合致し、合理的である。したがって、数人の相続人がいるときは、特段の事情のない限り、民法427条にいう「別段ノ意思表示」があるものとして、各受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。
重要事実
Dは被上告人と積立女性保険契約を締結した。申込書の受取人欄には記載がなかったが、同欄には「相続人となる場合は記入不要です」との注記があり、保険証券には「法定相続人」と記載されていた。Dが事故死した際、相続人は配偶者である上告人と兄弟姉妹ら10名(上告人の法定相続分は4分の3)であった。原審は、受取人の指定がなかったか、あったとしても割合の指定はないとして、民法427条の原則により平等の割合で分割されるべきとした。
あてはめ
Dが受取人欄の記載を省略したのは「相続人の場合は記入不要」との注記に従ったものであり、受取人を「相続人」と指定したものと推認される。この指定には、将来の相続人変動に対応する趣旨のみならず、各人の相続分に応じた取得を認める趣旨も含まれていると解される。したがって、本件には「相続分の割合」によるという「別段の意思表示」が認められ、上告人は法定相続分である4分の3の割合で保険金請求権を取得するといえる。
結論
保険金受取人を「相続人」と指定した場合、各相続人が取得する権利の割合は法定相続分の割合による。したがって、上告人の請求を排斥した原判決は破棄される。
実務上の射程
保険金請求権は相続財産ではなく受取人の固有財産とされるが、受取人の指定方法から「相続分の割合」という配分基準を導き出した点に意義がある。答案では、民法427条の分割債権の原則に対する「別段の意思表示」の具体例として、契約者の合理的意思解釈の枠組みで記述すべきである。
事件番号: 昭和63(オ)1748 / 裁判年月日: 平成4年3月13日 / 結論: 破棄自判
普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した…