被保険者死亡の場合、保険金受取人の指定のないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う旨の保険約款の条項は、被保険者が死亡した場合において被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解すべきであり、右約款に基づき締結された保険契約は、保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同様、特段の事情のないかぎり、被保険者死亡の時におけるその相続人たるべき者のための契約であると解するのが相当である。
被保険者死亡の場合保険金受取人の指定のないときは保険金を被保険者の相続人に支払う旨の約款のある保険契約の性質
商法675条
判旨
保険金受取人の指定がなく「相続人に支払う」旨の約款がある場合、保険金請求権は相続人の固有財産となり、被保険者の遺産には属さない。
問題の所在(論点)
保険金受取人の指定がなく、約款により「相続人に支払う」と定められている場合、当該保険金請求権は被保険者の相続財産(遺産)に含まれるか。
規範
「保険金受取人の指定がないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う」旨の約款がある場合、それは保険金受取人を相続人と指定したのと同様に解すべきである。かかる保険契約は、特段の事情のない限り、被保険者死亡時における相続人のための契約であり、保険金請求権は契約の効力発生と同時に相続人の固有財産となり、被保険者の遺産から離脱する。
重要事実
D保険株式会社の交通事故傷害保険普通保険約款には、受取人の指定がないときは被保険者の相続人に保険金を支払う旨の規定があった。本件保険契約はこの約款に基づき団体保険として締結された。被保険者が死亡した際、保険金請求権が被保険者の遺産(相続財産)として扱われるのか、あるいは相続人らの固有財産となるのかが争点となった。
あてはめ
本件約款の規定は、保険金請求権の帰属を明確にするため相続人に取得させることを定めたものであり、相続人を受取人に指定した場合と異ならない。したがって、保険金請求権は被保険者の死亡という保険事故の発生と同時に、その時点での相続人である被上告人らの固有財産として発生する。本件が団体保険である点は、この法理を左右するものではない。
結論
本件保険金請求権は、相続人である被上告人らの固有財産に属し、被保険者の遺産には含まれない。
実務上の射程
受取人指定がある場合だけでなく、約款により相続人が受取人とされる場合にも「固有財産性」を認めた。これにより、遺産分割の対象外となり、相続放棄をした者でも受取人として保険金を受領できる。ただし、税法上の「みなし相続財産」としての扱いや、共同相続人間で著しい不公平が生じる場合の特別受益(民法903条)の類推適用の可否については別途検討を要する。
事件番号: 令和6(受)120 / 裁判年月日: 令和7年10月30日 / 結論: 棄却
1 自動車保険契約の人身傷害条項が、保険金請求権者について、同条項の適用対象となる事故によって損害を被った「被保険者。ただし、被保険者が死亡した場合はその法定相続人とする。」と定めている場合において、この定めによって保険金請求権者が定まる人身傷害保険金のうち、上記「被保険者」が上記事故により死亡したときに生ずる保険金の…