保険事故が発生して具体化している生命保険契約に基づく保険金受取人の保険金請求権は、通常の金銭債権として、国税または地方税に関する滞納処分による差押の対象となりうる。
生命保険契約に基づく保険金請求権と滞納処分による差押
商法673条,国税徴収法5章1節6款
判旨
保険事故が発生し具体化した生命保険金の請求権は、通常の金銭債権として滞納処分による差押えの対象となる。
問題の所在(論点)
保険事故が発生し具体化した生命保険金請求権が、国税徴収法等に基づく滞納処分の対象となる「財産権」に含まれるか(差押禁止債権に当たらないか)。
規範
保険事故が発生してすでに具体化している生命保険契約に基づく保険金受取人の保険金請求権は、通常の金銭債権としての性質を有する。したがって、当該請求権は、国税または地方税に関する滞納処分による差押えの対象となりうるものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は、生命保険契約に基づく保険金受取人であったが、保険事故が発生し、保険金請求権が具体化した状態にあった。これに対し、国税または地方税の滞納処分として、当該保険金請求権の差し押さえがなされた。上告人は、生命保険金請求権の特殊性を理由に差押えの対象とならない旨を主張して争った。
あてはめ
本件における生命保険金請求権は、保険事故の発生により支払義務が確定し、具体的な金額を請求できる権利となっている。このような状態にある請求権は、もはや抽象的な期待権ではなく、独立した財産価値を有する「通常の金銭債権」と同視できる。したがって、公法上の強制執行手続である滞納処分において、他の金銭債権と同様に差押えを免れる特段の法的根拠はないと解される。
結論
具体化した生命保険金請求権は差押えの対象となる。本件差押処分は適法である。
実務上の射程
保険金請求権が「具体化」していることが要件である。事故発生前の期待権や解除返戻金請求権については別途検討を要するが、既発生の保険金については一般の金銭債権と同様の執行力を認めるのが実務の確立した準則である。答案上は、債権差押えの対象性の論点において、本判例を引用し、権利の具体性を指摘して差押えを肯定する論理として用いる。
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