労働者災害補償保険法による保険給付の受給者は、同法に基く行政機関の保険給付の決定以前に、保険金の支払を請求することはできない。
保険給付の決定前における労働者災害補償保険法に基く保険金支払請求の許否
労働者災害補償保険法12条
判旨
労働者災害補償保険法に基づく保険給付請求権は、行政庁による支給決定が行われることによって初めて具体的な権利として発生する。したがって、支給決定がなされる前においては、政府に対して具体的な保険金給付を請求する権利を有しない。
問題の所在(論点)
労災保険法に基づく保険給付請求権が、行政庁による支給決定を経ることなく、療養や休業といった客観的事実の発生のみによって当然に発生する具体的権利であるといえるか。
規範
社会保険給付等に係る権利の性質について、当該法律の定める手続により行政庁が支給決定をすることによって給付内容が具体的に確定し、受給者はこれによって初めて政府に対する具体的な請求権を取得する。支給決定は単なる確認ではなく、権利を具体化させる形成的な効果を有する。
重要事実
上告人は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく保険給付を求めたが、行政機関による具体的な保険給付の決定がなされる前の段階で、政府に対して直接的な給付請求権の存在を主張して提訴した。原審が、支給決定前の具体的請求権を否定したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
労災保険法所定の手続を検討すると、行政機関が保険給付の決定を行うことによって給付の内容が具体的に定まる仕組みとなっている。本件において、上告人は当該手続による支給決定を受けておらず、給付内容が具体的に確定しているとはいえない。したがって、具体的権利が発生するための要件を欠いていると評価される。
結論
行政機関の支給決定がない限り、具体的権利は発生しない。よって、支給決定前の請求は認められない。
実務上の射程
公法上の金銭給付請求権の発生時期に関するリーディングケースである。答案上は、義務付け訴訟や給付訴訟の前提として、行政庁の裁量や決定の介在が必要な「具体的権利」の該当性を判断する際に引用する。特に労災や国民年金等の社会保障分野において、直接の公金支払請求が認められない理由を基礎付ける際に有用である。
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1 交通事故の被害者が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けてもなお塡補されない損害について自賠法16条1項に基づく請求権を行使する場合は,他方で労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転した上記請求権が行使され,被害者の上記請求権の額と国に移転した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超え…
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