判旨
上告の対象は原判決の当事者に限られるため、原判決の当事者でない者に対する上告は不適法であり、また上告理由書提出期間経過後の補充書に記載された理由は判断の対象とならない。
問題の所在(論点)
1. 原判決に表示されていない者を被上告人とすることの適否。2. 単なる事実誤認の主張が上告理由となるか。3. 期間経過後に提出された上告理由補充書の取扱い。
規範
上告は原判決の存在を前提とするものであるから、上告の相手方は原判決における当事者として表示されている者に限られる。また、適法な上告理由として認められるのは、憲法違反や判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反等に限られ、事実認定の不当をいうものはこれに当たらない。さらに、期間経過後に提出された上告理由補充書については判断を要しない。
重要事実
上告人は、被上告人として「国」および「労働保険審査会」を指定して上告を提起した。しかし、原判決の当事者として「国」は表示されていなかった。また、上告人は上告理由書提出期間の経過後に、累次にわたって上告理由補充書を提出した。
あてはめ
1. 国は原判決において当事者として表示されていないため、国に対する上告は上告の前提を欠く不適法なものといえる。2. 労働保険審査会に対する主張は、違憲をいう点もあるが、実質的には事実認定を争うものや判決に影響しない法令違反の主張にとどまり、適法な上告理由にはあたらない。3. 提出された各補充書は、いずれも法定の提出期間を徒過しており、裁判所はこれに対する判断を行う必要がない。
結論
国に対する上告を却下し、労働保険審査会に対する上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)606 / 裁判年月日: 昭和35年11月1日 / 結論: 棄却
保険加入者に労働者災害補償保険法第一九条にいう故意または重大な過失があるものとして保険給付の制限を決定することは、労働基準監督署長の専権に属するものではなく、右決定につき不服の申立があるかぎり、上級の審査機関である労働者災害補償保険審査官、労働保険審査会もまた制限するかどうかおよび制限の範囲につき決定することができる。
民事訴訟における上告適格の範囲(原判決の表示当事者に限定されること)および、上告理由書提出期間の厳格な遵守が求められる実務運用を確認するものである。事実認定の争いは上告理由にならないという基本原則を再確認している。
事件番号: 昭和35(オ)918 / 裁判年月日: 昭和36年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が出頭していたにもかかわらず裁判所が不出頭として取り扱ったという主張は、客観的な証拠資料により出頭の事実が認められない限り、違憲の主張を含め採用されない。 第1 事案の概要:前訴の口頭弁論期日において、被上告人が出頭していたにもかかわらず、裁判所があえて当事者双方不出頭として取り扱ったと上告…
事件番号: 昭和27(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和31年10月30日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正前)第八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分にあたらない。
事件番号: 昭和30(オ)184 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
一 労働者災害補償保険法施行の日から一年三箇月余を経過した後保険事故が発生し、その間所轄政府機関において同法の施行につき、当該加入者を含む各事業主に対し相当の周知徹底の方法を講じ、加入者が相当の注意を払えば同法の趣旨を容易に知り得べかりし状況にあつた場合には、労働者災害補償保険審査会が、同法運用の実情を考慮して、右加入…
事件番号: 昭和32(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が原審で未主張の事実を前提とする場合、または原判決に影響を及ぼさない事実を前提とする場合は、上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を提起し、憲法違反を主張した事案。しかし、その主張の前提となっている事実は、原審(控訴審)では主張さ…