労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正前)第八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分にあたらない。
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正前)第八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分にあたるか
労働基準法(昭和31年法律126号による改正前のもの)85条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
労働基準法85条に基づく行政庁の審査決定は、使用者の災害補償義務の存否を確定させるものではなく、決定に従わないこと自体で刑罰を科される関係にもないため、その取消しを求める訴えの利益を欠く。
問題の所在(論点)
労働基準法85条に基づく審査決定が、使用者の刑事罰等と法律上の関係を有するか。また、それにより当該決定の取消しを求める「訴えの利益」が認められるか。
規範
行政処分に対する取消しの訴えが認められるためには、当該処分によって自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあること(訴えの利益)を要する。処分の有無が罰則の適用という法律上の効果と直接の因果関係を有しない場合には、処分の取消しを求める法律上の利益は認められない。
重要事実
上告人(使用者)は、労働基準法上の災害補償等に関し、同法85条に基づく監督署長の審査決定を受けた。上告人は、当該審査決定に従わない場合には同法102条により告発され、119条により処罰される法的不利益を被る可能性があると主張して、審査決定の取消しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和30(オ)184 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
一 労働者災害補償保険法施行の日から一年三箇月余を経過した後保険事故が発生し、その間所轄政府機関において同法の施行につき、当該加入者を含む各事業主に対し相当の周知徹底の方法を講じ、加入者が相当の注意を払えば同法の趣旨を容易に知り得べかりし状況にあつた場合には、労働者災害補償保険審査会が、同法運用の実情を考慮して、右加入…
あてはめ
労働基準法上、使用者が処罰されるのは、審査決定に従わないためではなく、同法75条等の補償支払義務を履行しないためである。審査決定の有無は、刑事告発や処罰と法律上の直接の関係を有しない。すなわち、決定がなくても義務違反があれば処罰され、逆に決定があっても実体法上の支払義務がなければ処罰されることはない。したがって、審査決定によって使用者が法的地位に不利益を受けるとはいえず、その取消しを求める利益はない。
結論
審査決定は刑事罰の適用と法律上の関係がないため、その取消しを求める訴えの利益は認められず、訴えは却下(本件では上告棄却)されるべきである。
実務上の射程
行政処分の「処分性」や「訴えの利益」が問題となる場面で、行政上の判断が後続の刑事罰等に直結しないことを理由に、訴訟の対象外とする際のロジックとして活用できる。特に労働法上の行政指導や確認的行為の性質を論ずる際に有用である。
事件番号: 昭和35(オ)327 / 裁判年月日: 昭和36年1月31日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上告の対象は原判決の当事者に限られるため、原判決の当事者でない者に対する上告は不適法であり、また上告理由書提出期間経過後の補充書に記載された理由は判断の対象とならない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人として「国」および「労働保険審査会」を指定して上告を提起した。しかし、原判決の当事者として「…
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。
事件番号: 昭和28(オ)251 / 裁判年月日: 昭和30年1月28日 / 結論: 破棄自判
保険給付に関する決定および保険審査官のした審査決定についての、労働者災害補償保険審査会に対する審査請求が不適法として却下された場合は、右却下決定が正当である以上、右保険給付に関する決定および保険審査官の決定の取消を求める訴は不適法である。