一 保険料を分割払とする保険契約に適用される約款における第二回目以降の分割保険料の支払を払込期日後一箇月以上遅滞したときは右払込期日後に生じた事故について保険金を支払わない旨の条項は、右の遅滞により保険会社が保険金支払義務を負わなくなった状態が生じた後においても、履行期が到来した未払分割保険料の元本の全額に相当する金額が当該保険契約が終了する前に保険会社に対して支払われたときは、保険会社は、右支払後に発生した保険事故については保険金支払義務を負うことをも定めているものと解すべきである。 二 保険料を分割払とする保険契約に適用される約款における第二回目以降の分割保険料の支払を払込期日後一箇月以上遅滞したときは右払込期日後に生じた事故について保険金を支払わない旨の条項については、右の遅滞により保険会社が保険金支払義務を負わなくなった状態(保険休止状態)の発生による保険金支払義務の消滅を主張する者は保険休止状態の発生時期及びそれ以後に保険事故が発生したことを主張、立証すべき責任を負い、保険休止状態の解消による保険金支払義務の再発生を主張する者は保険休止状態の解消時期及びそれ以後に保険事故が発生したことを主張、立証すべき責任を負う。
一 分割保険料を滞納すると保険金を支払わない旨の約款の下における滞納保険料の全額が支払われた場合の保険金支払義務の帰すう 二 保険料分割払約款におけるいわゆる保険休止状態の発生による保険金支払義務の消滅及び保険休止状態の解消による保険金支払義務の再発生についての主張立証責任
商法第3編第10章保険,民法91条,民訴法第2編第3章第1節総則
判旨
分割保険料の支払遅滞による保険休止状態における事故について、保険金支払義務の消滅を主張する者は休止状態の発生時期を、義務の再発生を主張する者は休止状態の解消時期を、それぞれ立証する責任を負う。本件では、事故が保険料支払前の休止期間中に生じた可能性を排除できないため、再発生を主張する相続人の請求は棄却される。
問題の所在(論点)
保険料の支払遅滞により保険金支払義務が一時停止(休止)し、その後に遅延保険料が支払われて義務が復活した場合において、事故が「休止期間中」に発生したのか「復活後」に発生したのかが不明であるときの立証責任の所在が問題となる。
規範
1. 分割保険料の不払による免責条項(保険休止状態)の趣旨は、保険料収入の確保と不当な義務履行の回避にある。したがって、未払保険料が支払われたときは保険金支払義務が再発生すると解するのが当事者の意思に合致し、衡平である。 2. 立証責任について、保険休止状態の発生は権利消滅事由であるから、義務の消滅を主張する者がその発生時期及びその後の事故発生を立証すべきである。他方、保険休止状態の解消は権利の再発生事由であるから、義務の再発生を主張する者がその解消時期及びその後の事故発生を立証すべきである。
重要事実
1. D(被保険者)は、分割払特約付の自動車保険を締結し、第1回保険料を支払ったが、第2・3回分を滞納した。 2. 約款には、分割保険料の払込期日から1か月を経過しても支払がない場合、それ以後の事故について保険金を支払わない旨の定め(休止条項)があった。 3. 平成元年7月11日にDは行方不明となり、その後海底の車内で遺体で発見された。事故発生は同月11日以降であるが、具体的な日時は不明である。 4. 同月14日、保険代理店がDに代わって滞納分を立替払いし、保険休止状態が解消された。
あてはめ
1. 被上告人(保険会社)側について:保険休止状態は、第2回払込期日の1か月後である平成元年5月27日に発生した。本件事故は同7月11日以降に発生しており、休止状態発生後の事故であることは証明されているため、保険会社は消滅事由の立証を尽くしたといえる。 2. 上告人(相続人)側について:保険休止状態は、同7月14日の保険料支払により解消された。しかし、事故がこの解消時期(14日)よりも後に発生したことを認めるに足りる証拠はない。したがって、権利の再発生を主張する相続人は、その立証責任を尽くしていない。
結論
事故発生時期が保険休止状態の解消前か後か不明である以上、権利の再発生を主張する上告人らの保険金請求は認められない。
実務上の射程
保険料未払による免責条項の法的性質を「権利消滅事由」と「再発生事由」に分けて分析し、立証責任を分配した点に実務上の意義がある。答案では、客観的立証責任(真偽不明の場合の不利益)の所在を論じる際の基準として活用すべきである。
事件番号: 昭和44(オ)1129 / 裁判年月日: 昭和45年2月27日 / 結論: 棄却
保険事故が発生して具体化している生命保険契約に基づく保険金受取人の保険金請求権は、通常の金銭債権として、国税または地方税に関する滞納処分による差押の対象となりうる。
事件番号: 平成13(オ)734 / 裁判年月日: 平成16年3月25日 / 結論: その他
1 生命保険契約に係る保険約款中の保険者の責任開始の日から1年内に被保険者が自殺した場合には保険者は死亡保険金を支払わない旨の定めは,責任開始の日から1年経過後の被保険者の自殺による死亡については,当該自殺に関し犯罪行為等が介在し,当該自殺による死亡保険金の支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事…