昭和四〇年一〇月に改訂され昭和四七年まで存在した自動車保険普通保険約款に基づく自動車対人賠償責任保険契約における保険金支払債務は、被保険者の被害者に対し支払うべき損害賠償額が確定するまではその履行期が到来しない。
昭和四〇年一〇月に改訂され昭和四七年まで存在した自動車保険普通保険約款に基づく自動車対人賠償責任保険契約における保険金支払債務の履行期の到来
商法629条
判旨
責任保険契約における保険金支払債務の履行期は、別段の約定がない限り、被保険者が第三者に対して負担する損害賠償額が具体的に確定した時に到来する。したがって、賠償額の確定前に保険者が保険金を支払った場合、履行遅滞は成立しない。
問題の所在(論点)
責任保険契約において、保険者の保険金支払債務の履行期はいつ到来するか。被害者に対する賠償額が確定する前であっても、保険事故の発生や請求等によって履行期が到来し、履行遅滞が成立するか。
規範
損害保険契約は現実の損害填補を目的とするため、填補すべき損害額が確定しなければ、保険者は支払うべき保険金額を確認できない。したがって、別段の約定がない限り、損害賠償額が具体的に確定するまでは、保険者の保険金支払債務の履行期は到来しない。また、事故発生から一定期間内の書類提出等を定めた約款の規定も、賠償額確定を前提とする趣旨であり、これに反する特段の定めとは認められない。
重要事実
自動車対人賠償責任保険(本件保険契約)の被保険者Dが、自動車事故を起こし上告人(被害者)を負傷させた。Dと上告人との間で賠償額について争いがあり、訴訟となったが、保険者である被上告人は判決確定前(賠償額確定前)に約定の保険金1000万円をDに支払った。上告人は、被上告人が保険金支払債務につき履行遅滞に陥っていたと主張した。
あてはめ
本件において、被保険者Dと被害者である上告人との間では賠償額について争いがあり、訴訟の第一審判決が確定するまで賠償額は未確定であった。被上告人(保険者)は、この賠償額が確定する前に保険金全額を支払っている。規範に照らせば、賠償額が確定しない限り保険金支払債務の履行期は到来しないため、履行期到来前に支払いを完了した被上告人には、いかなる意味においても履行遅滞の責任は認められない。
結論
被上告人の保険金支払債務に履行遅滞があったとはいえない。上告を棄却する。
実務上の射程
責任保険における履行期の基準を示した重要判例である。答案上は、不確定期限債務の履行遅滞(民法412条2項、現行法同条1項参照)の問題として、賠償額確定時が「履行期」となることを示す際に用いる。また、保険金の遅延損害金の起算点を判断する際の不可欠な枠組みとなる。
事件番号: 昭和55(オ)188 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: 棄却
自動車保険普通保険約款に、加害者の保険会社に対する保険金請求権は、加害者と被害者との間で損害賠償額が確定したときに発生し、これを行使することができる旨の規定があつても、被害者が加害者に対する損害賠償請求と保険会社に対し加害者に代位してする保険金請求とを併合して訴求している場合には、右保険金請求訴訟は、将来の給付の訴えと…