不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期
民法412条,民法709条,自動車損害賠償保障法3条
判旨
不法行為に基づく弁護士費用損害の賠償債務は、他の損害項目と同一の侵害行為から生じる一個の債務の一部を構成するため、不法行為時に発生し、催告を要せず遅滞に陥る。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく弁護士費用損害賠償債務の発生時期、および遅延損害金の起算点(遅滞に陥る時期)はいつか。
規範
1. 弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容額等を斟酌して相当と認められる範囲で、不法行為と相当因果関係にある損害となる。 2. 不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に遅滞に陥る。 3. 弁護士費用損害も、身体傷害等と同一の利益侵害に基づき発生する以上、一個の損害賠償債務の一部を構成するため、不法行為時に発生し、かつ遅滞に陥る。 4. ただし、不法行為時から支払時までの中間利息を被害者が不当に利得しないよう算定すべきである。
重要事実
被害者(被上告人)は、加害者(上告人)による自動車事故により損害を被り、訴訟追行を弁護士に委任した。原審は、この弁護士費用について事故と相当因果関係のある損害を8万円と認め、事故後の昭和52年7月19日から完済まで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じた。これに対し上告人が、弁護士費用債務の発生時期と遅滞時期について不服を申し立てて上告した。
あてはめ
本件における弁護士費用損害は、本件事故という同一の不法行為に起因し、身体傷害等と同一の利益侵害から生じたものである。したがって、これは一個の損害賠償債務の一部を構成するといえる。そうである以上、性質上、現実に勝訴が確定するまで具体的な損害額が確定しない側面はあるものの、法的には不法行為時に発生したものと解される。原審において中間利息の不当利得が生じないよう配慮して損害額が算定されている以上、事故後の時点から遅延損害金の支払義務を課した判断は正当である。
結論
不法行為に基づく弁護士費用損害賠償債務は、不法行為時に発生し、かつ遅滞に陥る。したがって、事故時を起算点とする遅延損害金の請求は認められる。
実務上の射程
弁護士費用という、訴訟終了時まで現実に発生・確定しない損害であっても、不法行為時を起算点とする遅延損害金を付すべきであることを明確にした判例である。答案上では、他の損害(治療費や慰謝料)と同様に、事故時から年5%(現行法下では変動制)の遅延損害金を一律に請求できる根拠として用いる。その際、「中間利息控除」的な算定がなされていることを一言添えるとより正確である。
事件番号: 昭和44(オ)812 / 裁判年月日: 昭和45年6月19日 / 結論: 棄却
不法行為の被害者が弁護士に対し損害賠償請求の訴を提起することを委任し、成功時に成功額の一割五分の割合による報酬金を支払う旨の契約を締結した場合には、右契約の時が民法七二四条にいう損害を知つた時にあたり、その時から右請求権の消滅時効が進行するものと解して妨げがない。