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弁護士費用の賠償義務を認めた判断が相当とされた事例
民法709条
判旨
不法行為の被害者が訴訟を提起し弁護士に委任した場合、事案の難易や認容額等を斟酌して相当と認められる額の範囲内で、弁護士費用は不法行為と相当因果関係にある損害に含まれる。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償請求において、被害者が負担した弁護士費用が不法行為と相当因果関係(民法709条、706条)のある損害として認められるか。
規範
不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、弁護士に訴訟追行を委任した場合には、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、不法行為と相当因果関係に立つ損害として、賠償を求めることができる。
重要事実
加害自動車の運転者Dの過失により事故が発生し、被上告人らの両親が亡くなった。被上告人らは権利行使のため、後見人選任の申立てを含む賠償請求手続の遂行を弁護士に委任し、報酬の支払等を約した。上告人(加害車両側)は自賠法3条但書の免責や過失相殺を主張したが認められず、弁護士費用の損害賠償可否が争点となった。
あてはめ
本件では、被上告人らが権利擁護のために訴訟提起を余儀なくされ、弁護士に委任した事実が認められる。原審が、後見人選任手続を含む訴求手続の報酬として各72万5000円を「通常生ずべき損害」とした判断は、事案の諸般の事情を斟酌した結果として相当である。なお、判断にあたって斟酌した事情を逐一具体的に説示する必要はない。
結論
弁護士費用は、事案に応じた相当額の範囲内で不法行為と相当因果関係にある損害と認められる。本件の認容額は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護士費用を損害として認めたリーディングケースである。答案上は、不法行為の損害(相当因果関係)の項目で、認容額(本体損害)の約1割程度を弁護士費用として加算する際の根拠として用いる。実務上も、認容された損害額の10%程度を弁護士費用として認める運用が定着している。
事件番号: 昭和39(オ)505 / 裁判年月日: 昭和44年3月6日 / 結論: その他
不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。