不法行為による損害賠償についても、民法四一六条の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。
不法行為による損害賠償と民法四一六条
民法416条,民法709条,民訴法746条,民訴法755条,民訴法756条
判旨
不法行為による損害賠償の範囲についても民法416条が類推適用され、加害者は特別の事情によって生じた損害については、その事情を予見し、又は予見することが可能であった場合に限り賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
不法行為による損害賠償の範囲の決定において、民法416条が類推適用されるか、および特別事情による損害の予見可能性の要否が問題となる。
規範
不法行為に基づく損害賠償の範囲を定めるにあたっては、債務不履行に関する民法416条の規定を類推適用する。したがって、相当因果関係の範囲内の損害のうち、通常生ずべき損害(同条1項)に加え、特別の事情によって生じた損害については、加害者がその事情を予見し、または予見することができたとき(同条2項)に限り、賠償の対象となる。
重要事実
被上告人(加害者)は上告人(被害者)に対し仮処分を執行したが、後に起訴命令を受けながら本案訴訟を提起せず、自ら仮処分の執行取消申請を行った。これにより本件仮処分は被保全権利を欠く違法な不法行為を構成すると推認された。上告人は、この仮処分執行により財産上および精神上の損害を被ったとして損害賠償を請求したが、それらの損害は通常生ずべき損害の範囲を超えていた。
あてはめ
上告人が主張する財産上および精神上の損害は、仮処分の執行によって通常生ずべき損害にはあたらない「特別の事情によって生じた損害」であると解される。そして、被上告人が本件仮処分の申請および執行の当時、これらの特別事情を予見し、または予見し得べき状況にあったとは認められない。したがって、416条2項の要件を欠くため、当該損害について被上告人は賠償責任を負わない。
結論
本件損害は特別事情によるものであり、加害者に予見可能性が認められない以上、賠償の範囲に含まれない。したがって、上告人の請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
不法行為における相当因果関係を画定する判断枠組みとして、債務不履行の規定(416条)を公式に用いることを確定した判例である。司法試験答案では、不法行為の損害賠償範囲が問題となる際、「416条類推適用」を明示した上で、通常損害か特別損害かを区別し、後者の場合は「予見可能性」の有無を具体的事実から検討する流れで用いる。
事件番号: 昭和47(オ)720 / 裁判年月日: 昭和49年3月15日 / 結論: 破棄差戻
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