第二審判決理由を是認した判決。
賃貸借予約上の権利を不法かつ故意に侵害したものとして不法行為の成立を認めた事例
民法709条
判旨
賃貸借予約に基づき権利を有する者に対し、第三者が不法かつ故意に当該権利を侵害した場合には、民法709条に基づく不法行為が成立する。
問題の所在(論点)
第三者が債権者と債務者間の契約関係(本件では賃貸借予約)に介入し、債権の内容を消滅・侵害させた場合に、当該第三者に対して民法709条に基づく不法行為責任を追及できるか。いわゆる「第三者による債権侵害」の可否が問題となる。
規範
債権は、物権のような排他的な支配権ではないものの、特定の利益を享受する法的保護に値する権利である。したがって、第三者が当該債権の内容を認識しつつ、不法かつ故意にこれを侵害した場合には、不法行為(民法709条)を構成すると解すべきである。
重要事実
株式会社Dは被上告人との間で、将来的に特定の物件を賃貸する旨の賃貸借予約を締結し、被上告人は当該予約に基づく権利を有していた。しかし、上告人は株式会社Dとの間で別個に賃貸借の合意解約を成立させるなどし、被上告人の予約上の権利を侵害した。被上告人は、上告人の行為が不法行為にあたるとして損害賠償等を求めた。
あてはめ
上告人は、株式会社Dと被上告人との間に賃貸借予約が存在することを知りながら、あえて当該権利を不法かつ故意に侵害した。合意解約の成立自体は有効であっても、その目的や経緯が債権者を害するものである以上、上告人の行為は自由競争の範囲を逸脱した違法なものと評価される。したがって、故意による不法な権利侵害が認められる。
結論
上告人の行為は被上告人の賃貸借予約に基づく権利を侵害するものであり、不法行為が成立する。上告を棄却し、上告人に損害賠償責任を認めた原審の判断を維持する。
実務上の射程
債権の相対性を前提としつつ、第三者による債権侵害を肯定した事例である。司法試験においては、単なる債務不履行の問題にとどまらず、背信的意図を持った第三者が介入した場合に709条の枠組みで処理する際の論拠として活用できる。特に「故意」と「違法性」の認定が重要となる。
事件番号: 昭和43(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和48年6月7日 / 結論: 棄却
不法行為による損害賠償についても、民法四一六条の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。