自動車保険普通保険約款に、加害者の保険会社に対する保険金請求権は、加害者と被害者との間で損害賠償額が確定したときに発生し、これを行使することができる旨の規定があつても、被害者が加害者に対する損害賠償請求と保険会社に対し加害者に代位してする保険金請求とを併合して訴求している場合には、右保険金請求訴訟は、将来の給付の訴えとして許される。
交通事故の被害者が加害者に対する損害賠償請求訴訟と併合して保険会社に対し加害者に代位して提起した自動車保険普通保険約款に基づく保険金請求訴訟の許否
民法423条,商法629条,民訴法226条
判旨
賠償責任保険において、被保険者の保険金請求権は、保険事故発生と同時に損害賠償額の確定を停止条件とする債権として発生し、被害者が被保険者への賠償請求と保険者への代位請求を併合提起した場合、前者の認容により条件が成就するため、将来の給付の訴えとして認容できる。
問題の所在(論点)
損害賠償額が未確定の段階で、被害者が被保険者の保険金請求権を代位行使することの可否、および当該請求権の発生時期と性質。
規範
1. 責任保険の保険金請求権は、保険事故の発生と同時に、被保険者と被害者との間の損害賠償額の確定を停止条件とする債権として発生し、賠償額が確定した時に条件が成就して内容が確定・行使可能となる。 2. 被害者が同一訴訟手続で被保険者に対する賠償請求と保険金請求権の代位行使を併せて訴求する場合、賠償額の確定がまさにその訴訟によって決まるため、「あらかじめその請求をする必要がある場合」(民訴法135条参照)として、将来の給付の訴えの形で認容できる。
重要事実
被害者(被上告人)が、加害者(被保険者)に対して損害賠償を求めるとともに、保険会社(上告人)に対して被保険者の有する保険金請求権の代位行使を求めて提訴した。保険約款には、賠償額が判決や和解等により確定した時に保険金請求権が発生し、行使できる旨の規定があった。保険会社は、賠償額が確定していない現時点では代位行使の対象となる権利が不確定であると主張した。
あてはめ
本件約款の規定によれば、保険金請求権は賠償額確定を停止条件として発生すると解される。本件のように被害者が同一手続で賠償請求と代位請求を併合提起している場合、同一裁判所による賠償請求の認容判決そのものによって停止条件が成就する関係にある。したがって、判決確定を待たずとも、将来の給付の訴えの要件を満たすものとして、賠償請求の認容と同時に保険金請求を認めることができる。
結論
被保険者の損害賠償額が未確定であっても、同一訴訟内で賠償請求と併せて代位請求がなされている場合には、裁判所は両者を同時に認容することができる。
実務上の射程
債権者代位権(民法423条)の行使において、被代位権利が停止条件付債権である場合の行使可能性と、将来の給付の訴え(民訴法135条)の適格性が問題となる場面で活用できる。特に責任保険における被害者の直接的な救済を認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和52(オ)903 / 裁判年月日: 昭和54年5月31日 / 結論: 棄却
昭和四〇年一〇月に改訂され昭和四七年まで存在した自動車保険普通保険約款に基づく自動車対人賠償責任保険契約における保険金支払債務は、被保険者の被害者に対し支払うべき損害賠償額が確定するまではその履行期が到来しない。
事件番号: 平成20(受)12 / 裁判年月日: 平成20年10月7日 / 結論: 破棄差戻
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