自動車損害賠償保障法三条の規定による損害賠償請求権を執行債権とし、右損害賠償義務の履行によつて発生すべき同法一五条所定の自動車損害賠償責任保険金請求権につき転付命令が申請された場合には、右保険金請求権は、券面額ある債権として被転付適格を有する。
自動車損害賠償保障法三条の規定による損害賠償請求権を執行債権とする転付命令と右損害賠償義務の履行によつて発生すべき同法一五条所定の自動車損害賠償責任保険金請求権の被転付適格
民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)601条,自動車損害賠償保障法15条,民事執行法159条
判旨
自動車損害賠償保障法に基づく保険金請求権は、被保険者の被害者に対する賠償金の支払を停止条件とする債権であるが、転付命令の発効による執行債権の弁済効果により停止条件が成就するため、転付適格が認められる。
問題の所在(論点)
自賠法15条に基づき、被保険者が被害者に賠償額を支払うことを停止条件とする自賠責保険金請求権について、その支払(条件成就)がなされる前に発せられた転付命令が有効といえるか、その転付適格が問題となる。
規範
自賠責保険契約に基づく被保険者の保険金請求権は、被保険者が被害者に対して賠償金を支払うことを停止条件とする債権である。しかし、被害者が加害者に対する損害賠償請求権を執行債権として、当該損害賠償義務の履行により発生すべき保険金請求権を差し押さえ、転付命令を申請した場合、転付命令が有効に発せられ執行債権の弁済効果が生じること自体によって停止条件が成就する。したがって、当該保険金請求権は券面額ある債権として転付適格を有する。
重要事実
加害者Dは被害者Fらを死傷させ、被害者遺族である上告人らはDに対し損害賠償を求める訴えを提起して勝訴判決を得た。上告人らは、Dが被上告人(保険会社)に対して有する自賠責保険金請求権を対象として、前記判決を債務名義とする差押及び転付命令を得て、これが被上告人に送達された。しかし、原審は、Dが上告人らに賠償金を現実には支払っていないため保険金請求権は未発生であるとして、転付命令による権利移転を否定した。
あてはめ
本件における転付命令の執行債権は、被転付債権である保険金請求権の発生原因と同一の事故に基づく損害賠償請求権である。転付命令が送達され、執行債権の弁済の効果が生じれば、法律上は加害者が賠償義務を履行したのと同視できる。この執行債権の弁済効果が発生するというまさにそのことによって、保険金請求権の発生要件たる「賠償金の支払」という停止条件が成就したものと解される。したがって、現実の支払が先行していなくとも、転付命令により保険金請求権は上告人らに移転する。
結論
本件各転付命令により、自賠責保険金請求権は上告人らに移転し、同時に停止条件も成就したものと認められる。
実務上の射程
自賠責保険の被害者保護の趣旨を重視し、実務上、加害者の無資力により現実の支払が困難な場合でも、被害者が転付命令を通じて直接保険金を回収できる道を認めた。民事執行法上の転付適格と条件付債権の取扱いに関する重要判例である。
事件番号: 令和3(受)1473 / 裁判年月日: 令和4年7月14日 / 結論: 破棄自判
被害者の有する自賠法16条1項の規定による請求権の額と労災保険法12条の4第1項により国に移転した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超える場合であっても、自動車損害賠償責任保険の保険会社が国の上記請求権の行使を受けて国に対して上記保険金額の限度でした損害賠償額の支払は、有効な弁済に当たる。