被害者の受領拒絶を理由とする損害賠償債務についての弁済供託は、自動車損害賠償保障法一五条にいう「支払」に当たる。
被害者の受領拒絶を理由とする損害賠償債務についての弁済供託と自動車損害賠償保障法一五条にいう「支払」
自動車損害賠償保障法15条,民法494条
判旨
自動車損害賠償保障法15条にいう「支払」とは、被保険者の出捐により債務を消滅させ被害者に現実の満足を与えるものを指し、有効な弁済供託もこれに含まれる。
問題の所在(論点)
自賠法15条所定の、被保険者が保険会社に対して保険金を請求するための要件である「支払」に、被害者の受領拒絶を理由とする有効な弁済供託が含まれるか。
規範
自賠法15条が保険金の請求を「支払をした限度」に制限した趣旨は、被保険者が保険金を受領しながら被害者に賠償しない事態を防ぎ、被害者保護を図る点にある。したがって、同条にいう「支払」とは、被保険者の出捐によって損害賠償債務の全部又は一部を消滅させ、これによって被害者に現実の満足を与えるものをいう。有効な弁済供託は、被保険者の出捐により債務を消滅させるものであり、かつ被害者はいつでも還付を受けられ現実の満足を得られるため、同条の「支払」に当たる。
重要事実
自賠責保険の被保険者であるD運送は、被害者との間の損害賠償請求事件の確定判決に基づき、損害賠償債務の全額を被害者に提供した。しかし、被害者がその受領を拒絶したため、D運送は当該債務につき弁済供託を行った。その後、被保険者が保険会社に対し、右供託が自賠法15条の「支払」に当たるとして保険金の支払を請求したところ、供託が同条の要件を満たすかが争点となった。
あてはめ
本件において、被保険者D運送は確定判決に基づく賠償額を被害者に提供しており、出捐の意思は明確である。被害者の受領拒絶を受けてなされた本件供託は、法律上、被保険者の出捐によって賠償債務を消滅させる効力を有する。また、被害者は供託所に対していつでも供託金の還付を請求できる地位に置かれることから、被害者に対して「現実の満足」を与えたものと評価できる。したがって、本件供託は自賠法15条の趣旨を害するものではなく、同条の「支払」に該当すると解される。
結論
被保険者が有効な弁済供託をした場合には、自賠法15条にいう「支払」をしたものと認められる。
実務上の射程
自賠法15条の解釈において「現実の満足」というキーワードを用いた点に意義がある。答案上では、条文の趣旨(被害者保護)から「支払」の概念を画定し、弁済供託がその趣旨に反しないことを論証する際に本判例のロジックが活用できる。また、直接の支払以外の債務消滅原因(相殺等)が同条の「支払」に含まれるかを検討する際の比較基準としても有用である。
事件番号: 昭和35(オ)737 / 裁判年月日: 昭和39年10月15日 / 結論: その他
保険者が填補すべき損害の範囲を契約所定の保険事故たる被傭者の不正行為によつて直接惹起された損害のみとする信用保険契約にあつては、特約のないかぎり、右不正行為による損害の調査のため被保険者たる雇主が公認会計士に支払つた費用ならびに右不正行為の告訴手続および本件保険金請求訴訟提起等のため弁護士に支払つた費用は、右填補すべき…