異なる金額の各支払を求めうる債権を有する原告両名が請求の趣旨で右金額の合計額の支払を求めている場合において、請求の原因、弁論の全趣旨等に照らし、原告らの真意が右各金額の支払を求めることにあるとうかがわれる事実関係のもとにおいては、右請求の趣旨につき釈明を求めることなく、原告らが右合計額の二分の一ずつの金額の各支払を求める申立をしているとすることには、釈明権不行使の違法がある。
請求の趣旨について釈明権不行使の違法があるとされた事例
民訴法127条
判旨
訴状の請求の趣旨の記載が不明確な場合でも、請求の原因や弁論の全趣旨等から原告が真に意図する請求範囲がうかがわれるときは、裁判所は釈明権を行使して申立ての真意を明らかにする義務がある。
問題の所在(論点)
訴状の請求の趣旨の記載から、各原告が合計額を等分して請求していると読める場合であっても、裁判所は釈明権を行使して真の請求範囲を確認すべきか。処分権主義(民訴法246条)との関係における釈明義務の有無が問題となる。
規範
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる(釈明権の行使)。特に、請求の趣旨の記載のみから判断すると原告に不利益が生じる恐れがある場合、請求の原因、弁論の全趣旨及び訴訟の経緯に照らして原告が真に意図している内容が推認されるときは、何ら釈明を求めることなく申立ての範囲を速断することは釈明権の行使を怠った審理不尽の違法となる。
重要事実
上告人(子)及び原告D(妻)は、亡父の交通事故に伴う自賠責保険金の受領事務を被上告人に委任したが、受領済みの保険金のうち450万円(本件残額)が引き渡されないとして、連名で「450万円及び遅延損害金」の支払を求める訴えを提起した。第一審は、委任事務の態様から上告人に約285万円、Dに約164万円の引渡義務を認め、申立ての限度で認容した。これに対し、控訴審は、請求の趣旨の記載上、上告人らは各225万円(450万円の2分の1ずつ)を求めているものと形式的に解釈。上告人につき、第一審が認容した225万円を超える部分(約60万円)は「申立てがない」として、釈明なく第一審判決を取り消した。
あてはめ
本件では、上告人らの請求の原因や弁論の全趣旨、訴訟の経緯を検討すれば、上告人らが意図していたのは、委任契約に基づき受領し得る債権全部(本件残額450万円全額)の履行を求める点にあったとうかがわれる。そうであれば、控訴審は、形式的な記載のみに基づいて「各225万円の申立て」と速断するのではなく、上告人らに対し釈明を求めて申立ての真意を明らかにすべきであったといえる。これを怠った原審の判断には、釈明権行使の懈怠による審理不尽の違法がある。
結論
釈明権の行使を怠り、申立ての範囲を速断して第一審判決を取り消した原判決には、判決に影響を及ぼす違法があるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
答案上は、処分権主義(246条)が問題となる場面で、当事者の申立て内容が不明確な場合の裁判所の対応として引用する。形式的な申立ての範囲に拘泥して不意打ち的な判決を下すのではなく、合理的な意思解釈のための釈明義務を認める文脈で使用する。特に、共同訴訟において合計額のみが明示されている場合の個別額の確定において重要となる。
事件番号: 昭和25(オ)158 / 裁判年月日: 昭和27年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既存債務の支払いのために小切手が交付された場合、それにより当然に更改契約が成立するのではなく、既存債務が消滅するか否かは当事者の意思解釈によって定まる。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、既存の債務を負っていた。上告人は、第三者(訴外D)が振り出した額面2万7000円の本件小切手を含む計6…
事件番号: 平成20(受)12 / 裁判年月日: 平成20年10月7日 / 結論: 破棄差戻
Yが運転する車両との衝突事故により傷害を負ったXが,Xの父が保険会社との間で締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づき保険金の支払を受けた場合において,上記保険金の支払をもってYの損害賠償債務の履行と同視することはできないこと,上記保険契約にはいわゆる代位に関する約定があり,上記保険会社は上記保険金の支払によ…