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当事者間に争のある事実を争のない事実と判示した違法が判決に影響を及ぼさないとされた事例。
判旨
委任契約の終了に伴い、受任者は委任者に対し、委任の趣旨に従って使用しなかった前渡金の残額を返還する義務を負う。再委託先が前渡金を費消・未返還である場合でも、受任者が委任者に対し当該金額相当の返還義務を負うことは妨げられない。
問題の所在(論点)
委任契約に基づき交付された前渡金について、再委託先が事務終了後に残額を返還していない場合、受任者は直接の委任者に対して当該残額の返還義務を負うか。
規範
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭を委任者に引き渡さなければならない(民法646条1項)。また、委任事務の処理に要するものとして前払を受けた資金(前渡金)については、事務終了時において、その趣旨に従って消費されなかった残額を委任者に返還すべき義務を負う。
重要事実
委任者(被上告人)は受任者(上告人)に対し、春蚕繭の買付を委託し、その買付資金を交付した。受任者は、さらに第三者(訴外DおよびE)に対して買付事務を再委託し、被上告人から交付された資金の一部を両名に交付した。その後、買付事務は終了したが、再委託先であるDおよびEは、交付を受けた資金のうち委託の趣旨に従って使用しなかった残額(合計27万5751円42銭)を返還しなかった。被上告人は、受任者である上告人に対し、同額の返還を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、上告人と被上告人の間には春蚕繭買付委託契約が存在し、上告人は資金の前払を受けている。事務終了時において、再委託先であるDおよびEが資金の残額を保持したまま返還していない事実は、上告人と再委託先との間の再委託契約関係に基づく問題にすぎない。上告人自身が被上告人から受領した前渡金のうち、事務の趣旨に従って消費されなかった残額については、受任者としての清算義務に基づき、上告人が被上告人へ返還すべき債務として確定される。したがって、上告人が被上告人に対し、再委託先が未返還である金額相当を返還すべきとした原審の判断は正当である。
結論
受任者は、委任事務の終了に際し、再委託先の状況にかかわらず、委任者から受領した前渡金の未消費残額を返還する義務を負う。
実務上の射程
委任事務の清算(民法646条)に関する基本的な責任関係を示すものである。再委託がなされた場合でも、委任者・受任者間の契約関係に基づく返還義務は独立して判断されるため、答案上は再委託先の不始末を受任者の抗弁とできないことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)625 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株式会社(商法上の商人)が締結した委託契約の解除に伴う不当利得返還義務は、商行為に基づき発生した債務にあたると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被上告人(株式会社)は、当時の社名において上告人との間で本件委託契約を締結した。その後、当該契約が解除されたことに伴い、被上告人が受領していた金員…