判旨
物品の販売を委託された者が指示価格以上で販売し、その指示価格に相当する代金を送付することを約した場合、それは販売の代理委託契約(委任及び代理権授与)にあたり、受任者は処分した物品に対応する代金の支払義務を負う。
問題の所在(論点)
物品の販売委託を受け、指示価格相当額の送付を約して物品を処分した受託者の法的責任が、いかなる契約関係に基づき認められるか。
規範
特定の物品について、一定の指示価格以上で販売することを条件として販売を委託し、受託者がこれに応じて販売・代金送付を約した場合には、民法上の委任(販売の代理の委託)及び代理権の授与がなされたものと解するのが相当である。この場合、受託者は委任契約に基づき、処分した物品の対価に相当する金員を委託者に支払う義務を負う。
重要事実
被上告人(原告)は、所有する花莚(かえん)102梱(6480畳)を、1畳あたり270円または220円の指示価格以上に販売するよう上告人(被告)及びその兄Dに委託した。上告人らは、これらを販売した場合には指示価格相当額を連帯して被上告人に送付することを約して引き受けた。その後、上告人らは花莚のうち1276畳分を処分したが、運賃等を控除した残金32万1820円を被上告人に送付しなかったため、被上告人がその支払いを求めて提訴した。
あてはめ
上告人とその兄は、被上告人から花莚の販売を指示価格以上で行うよう依頼され、販売時にはその指示価格相当額を送付することを合意している。この事実は、単なる寄託やその他の契約ではなく、販売の代理の委託契約(委任)が成立し、それに伴い販売のための代理権が授与されたものといえる。したがって、上告人らが実際に花莚の一部を処分(販売等)した以上、当該契約に基づき、処分した数量に応じた指示価格相当額を支払う債務を履行する責任がある。
結論
上告人らには、販売の代理委託契約に基づき、処分した花莚の代金相当額を支払う義務がある。したがって、上告人らに代金支払いを命じた原判決は妥当であり、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和32(オ)831 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】売買の委託等の商取引において契約当事者が誰であるかは、商談の経緯、帳簿の記載、仕切書の宛名、事前の連絡状況等の諸般の事情を総合して判断すべきである。形式的な書面の記載のみならず、取引の実態や当事者の合理的な行動原理に照らして真実の委託者を確定する必要がある。 第1 事案の概要:被上告人(組合)は、…
実務上の射程
販売受託者が受託品を処分した際の代金返還義務を「委任契約に基づく債務」として構成する際の根拠となる。問屋(商法551条)類似の事案において、民法上の委任と代理権授与の枠組みを適用して受託者の責任を認める実務上の処理を裏付けるものである。
事件番号: 昭和27(オ)915 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 破棄自判
物品販売の委託を受けた問屋が他の問屋にこれを再委託した場合、再委託を受けた問屋と委託者本人との間に民法第一〇七条第二項を準用すべきでない。