物品販売の委託を受けた問屋が他の問屋にこれを再委託した場合、再委託を受けた問屋と委託者本人との間に民法第一〇七条第二項を準用すべきでない。
問屋が受託事務を再委託した場合と民法第一〇七条第二項の準用の有無
商法552条2項,民法107条2項
判旨
問屋の再委託において、復代理に関する民法107条2項(現106条2項)は準用されず、委託者と再受託者の間に直接の権利義務関係は生じない。
問題の所在(論点)
問屋が委託販売を再委託した場合、民法107条2項(現106条2項)の準用により、委託者と再受託者との間に直接の権利義務関係が生じるか。商法552条2項による代理規定の準用の範囲が問題となる。
規範
商法552条2項が問屋と委託者の間に委任及び代理の規定を準用すると定めているのは、委任の規定を適用し、代理の規定を準用する趣旨である。しかし、問屋は自己の名で他人のために物品の販売等を行うものであって代理権を伴わない性質を有することから、復代理人が本人に対して直接の権利義務を負うとする民法107条2項(現106条2項)の規定は、その性質上、問屋の再委託の場合には準用されない。
重要事実
委託者(被上告人)は、問屋(訴外市場)に対し西瓜の販売を委託した。問屋は、やむを得ない事由により、さらに同種の問屋(上告人)へ当該西瓜の販売を再委託した。その後、委託者が再受託者に対し、販売代金から手数料等を控除した残額の支払を求めて直接提訴した事案である。
あてはめ
本件における問屋と委託者の関係は、その本質において委任であるが、問屋はあくまで「自己の名」をもって取引を行う者であり、委託者の代理人ではない。したがって、問屋が第三者に再委託したとしても、その再受託者は委託者の代理人と解される余地はなく、代理に関する民法107条2項(現106条2項)を準用して直接の法的紐付けを認めることは、問屋制度の性質に照らして相当ではない。よって、再受託者が委託者に対して直接に代金支払義務を負うことはない。
結論
委託者の再受託者に対する直接の支払請求は認められない。民法107条2項(現106条2項)の準用を認めて請求を認容した原判決は破棄される。
実務上の射程
問屋(商法上の委託販売等)における再委託の法的性質を論ずる際に必須の判例。復代理の規定が「性質に反しない限り」準用されるという一般論に対し、直接の権利義務関係の発生という点では準用を否定する。答案上は、問屋が自己の名で取引する点(計算のみが委託者に帰属する点)を強調して、代理規定適用の限界を示す根拠として用いる。
事件番号: 昭和32(オ)831 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】売買の委託等の商取引において契約当事者が誰であるかは、商談の経緯、帳簿の記載、仕切書の宛名、事前の連絡状況等の諸般の事情を総合して判断すべきである。形式的な書面の記載のみならず、取引の実態や当事者の合理的な行動原理に照らして真実の委託者を確定する必要がある。 第1 事案の概要:被上告人(組合)は、…